新企画が10月1日からスタートします。
「産経らくご」で人気評論を連載中の老舗ヘビメタ雑誌編集長にして落語評論家の広瀬和生氏が、過去に配信した公演の中から珠玉の一席を毎月セレクト。
初回は2020年7月29日の「J亭スピンオフ 三三・一之輔二人会」より、柳家三三『藁人形』をお届けします。
広瀬氏の落語愛に満ちた名文とともにご堪能ください。
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笑わせる滑稽噺でも感動させる人情噺でもない演目が落語には存在する。千住の女郎おくまと願人坊主の西念が織りなすドラマ『藁人形』もそのひとつ。八代目林家正蔵や五代目古今亭志ん生が演じた噺で、近年では先代の入船亭扇橋が得意としていたが、今は柳家三三の独擅場と言っていいだろう。三三の『藁人形』は扇橋の型を踏襲しているが、格段にドラマティック。おくまが西念に近づく序盤から三三の声音には不穏なものが漂い、その語り口に引き込まれる。こうした上手さは現代の演者の中では突出していると言えるだろう。とりわけ三三は性悪女を演じるのが実に巧みで、聴き手の心は西念に共鳴し、それゆえ終盤の展開が一段とスリリングに感じられる。陰鬱な噺であり、言ってしまえば“厭な噺”なのだが、三三の『藁人形』は実に聴き応えがある。三三の卓越した話芸が存分に発揮された一席だ。ぜひご堪能いただきたい。(広瀬和生)
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動画はこちらから!(10月1日~10月31日までご覧いただけます)
※ご視聴には『産経らくご』(月額1100円)への入会が必要です。初回ご登録の方に限り、30日間無料でお試しいただけます。
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