「産経らくご」で人気評論を連載中の広瀬和生氏が、
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柳亭信楽は独創的な新作落語で頭角を現わしている「落語芸術協会の新星」。異常事態の中で登場人物がバカバカしい台詞をあくまでシリアスに全力で発する可笑しさは信楽の真骨頂。ひとつのアイディアを力技でグイグイ広げて結末まで一点突破で駆け抜ける信楽落語がもたらす爆笑の爽快さは唯一無二。この魅力にハマったら信楽の高座を追いかけずにはいられない。2023年12月に渋谷らくご「創作大賞二〇二三」を受賞、2024年1月には公推協杯「第二回全国若手落語家選手権」で準優勝という結果を残し、今や「将来の落語界を牽引すべき逸材」として大いに注目されていると言っていい。
信楽ならではの傑作が幾つもある中で、『エレベーター』は落語という話芸の表現形式を逆手に取った異色作。異常な事態の中で登場人物が起こす行動が爆笑を呼ぶ、いつもの信楽落語の常道に則った作品と思わせておきながら、途中でそれが意外な方向に大転換。前半と後半で“笑い”のあり方が逆転するのである。この発想は天才的としか言いようがない。そして肝心なのは、信楽の新作は“仕掛け”を知ってから再びその作品を聴いても新鮮に笑えるということ。それこそが落語において最も大事なことだ。『エレベーター』を最初に聴いた時の衝撃は今でも忘れられないが、その後もこの作品に出会う度に毎回大いに笑わせてもらっている。それは“演者”信楽の持つ資質によるものが大きい。持ち前の“いい声”の使い方が絶妙なのだ。唯一無二の“信楽の世界”を堪能してほしい。(広瀬和生)
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動画はこちらから!(4月15日~5月14日までご覧いただけます)
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