【直球&曲球】噺家はやわじゃない 春風亭一之輔 

 今、落語の全国ツアーの真っ最中。ありがたいことに新規のお客さんが増えているので、開演前のマナー喚起の場内アナウンスは私自身がつとめている。
 ざわついてる会場に「どうも、一之輔です」とアナウンス。やはりアルバイトがやるよりよく聞いてくれる。
 「スマホは必ず電源から切ってくださいねー」「切り方がわからない人は近くの人に聞いてくださいよー」「聞くのが恥ずかしいなら、スマホなんか持つんじゃない!」「はい、この時間にスマホの電源切りましょう…切った方は拍手ー」
 場内はパチパチパチパチ。「じゃ、まだ切ってない人は拍手ー」。パチパチ。「…切れって言ってんだろ! 拍手してる暇あったら早く切れっ!!」
 こんな乱暴なアナウンスだが、かなりの効果がある。まぁそれでも鳴ることはあるのだけれど。公演中におしゃべりしたり、感想が口の端から漏れたりしちゃう人にも「口のパッキンが経年劣化してますから取り換えた方がいいですよ」「うるせえっ! 今オレがしゃべってんのよ!」くらい言うこともある。変な掛け声をかける人には「間が悪いですよ」とも。失礼な言い方だが「教育」。だって初めて来た人はわからないのだから。これを機に勉強、勉強です。
 先日、寄席で高座の最中に指笛を鳴らしたお客さんがいた…というネットニュースをみた。演者が「俺は犬じゃない!」と苦言、他の観客も眉をひそめたという。自称落語ファンのコメントは「新規の客はマナーがなってない」「そんな客は出禁にしろ」なんてのが多かった。
 寄席なんだからそんなに目くじら立てなくても。ちょっとご機嫌が過ぎたんだろう。演者も笑いを交えてたしなめただけで「もう来るな」とまでは思わない。おっちょこちょいなご新規さんにももうちょい優しくありたい。寄席の敷居が高くなり過ぎても困ります。かといってあんまりなめられても困るのだけど。指笛で驚くほど、噺家はやわじゃないのだ。

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