【直球&曲球】 春風亭一之輔 酷暑に思う囚人の苦役

 

8月初めに北海道落語ツアーへ行ってきた。
北海道のくせに気温は34度。どうなってるんだ、日本の夏は。最終日は月形町へ。初めて行く街で、仕事の前に旧樺戸集治監(かばとしゅうちかん)本庁舎がある町立月形樺戸博物館へ案内してもらった。
樺戸集治監は明治14年にできた刑務所。その当時の自由民権運動の政治犯や、その他の犯罪者をいわば「島流し」的に集めて、北海道開拓の労働力として従事させていたという。
未開の原始林を人力で切り開く。しかも足には重い鉄球をつながれたまま。夏にはヒグマや害虫に出くわし、冬には氷点下30度もの寒さと豪雪、そして僅かな食事。監獄での苦役で命を落とす者も多かった…という説明書きを読みながら、さっきタクシーで来た国道も、もともとは囚人たちが切り開いたと知りその労力に絶句した。その晩は街の人を招いての落語会。老若男女大勢がゲラゲラと笑う…これぞ平和だな。
翌日から短い夏休みをとり、後輩に誘われて甲子園へ。日陰が良かろうとバックネット裏に陣取ったのだが、午前8時のプレーボールとともにカンカン照りに。暑いのは承知、熱中症予防をしてはいるが、意識がもうろうとして自然とアクビが出る。
グラウンドでは途中「〇〇君、治療のため、一時中断いたします」とのアナウンスが何度となく繰り返される。足がつって走れなくなる選手もいる。観戦しときながらなんだけど、これマズいんじゃないか? この「茹(ゆ)で釜」のなか、なぜか樺戸集治監の囚人に思いを馳(は)せた。
途中休みながら4試合を観戦。周囲を見ると、黒光りした頭をそり上げたおじさんがたくさんいることに気づく。
「『甲子園の妖精』らしいですよ」と後輩。「住んでる人もいるみたいです」「噓つけ、そんなことあるもんか」なんてことを言いながら、帰り際にトイレに行って鏡を見ると、自分もその予備軍になっていた。
まぁとにかくなんです。早く夏、終われ。

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