2026年1月26日(月)「けんこう一番!第35回三遊亭兼好独演会」@文京シビックホール 小ホール
年に4回のペースで開催される三遊亭兼好独演会「けんこう一番!」。1月26日に開催された第35回の演目は以下のとおり。
三遊亭兼好『雑俳』
三遊亭げんき『孝行糖』
三遊亭兼好『館林』
~仲入り~
ウクレレえいじ(ウクレレ漫談)
三遊亭兼好『明烏』
この会では主役である兼好があえて開口一番を務める趣向。八五郎が隠居に俳諧を教わる『雑俳』は別名『りん廻し』。『雪てん』という落語の前半部分を独立させたもので、いわゆる“前座噺”とされるが、兼好は八五郎のボケかたが独特で、別格の面白さ。“りん”で始まり“りん”で終わる歌を詠む“りん廻し”で八五郎が意外な才能を発揮するのも楽しい。“りん廻し”から、似たような言葉を繰り返す“どんか(道歌)七度返し”へと進んでサゲる型。
続いて高座に上がったのは前座で兼好の五番弟子のげんき。親孝行の褒美として奉行から五貫文をもらった与太郎に町内の連中が飴売りの商いをさせる『孝行糖』を達者に演じた。
兼好の二席目は、剣術の道場に通っている八五郎が先生の武者修行の体験談を真似しようとして失敗する『館林』。大正から戦後まで活躍した八代目桂文治の演目で、それ以降は演じる者もなく埋もれていたが、兼好が独自の演出で爆笑編に仕上げて復活させた。『館林』をこんなに面白い噺にしたのは兼好であって、ほとんど“兼好の創作”に近い。ブラックなサゲを明るく演じられる兼好だからこそ、という一席。春風亭一之輔もこの噺を兼好から教わって演じている。
兼好のトリネタは堅物の若旦那が町内の源兵衛と太助に吉原へと連れて行かれる『明烏』。八代目桂文楽をはじめ古今亭志ん朝、柳家小三治ほか歴代の名人が演じてきたので落語ファンには馴染み深い演目だが、それだけに聞き手を新鮮に楽しませるのは難しい演目とも言える。その点、兼好はまさに“新鮮に楽しませてくれる”工夫が満載で、他の演者とは一線を画する。
この噺、ともすると“源兵衛”と“太助”の違いが曖昧になりがちだが、兼好は若旦那の時次郎に「源兵衛さんと、太助さんというかた」という言い方をさせて二人の立場をはっきり区別していて腑に落ちる。「浅草の観音様の裏手にあるお稲荷様にお参りをする」と騙された時次郎が大事そうに稲荷ずしの入った重箱を抱えてくるという演出は兼好オリジナルで、バカバカしくて素敵だ。
吉原に入ってからの三人のやり取りも、兼好は従来の演出を踏襲するのではなく随所にヒネリを利かせていて聴き応え満点。芸者や幇間を呼んだ座敷での場面は“時次郎がメソメソしてるので不機嫌な太助“と“気にせず能天気に遊ぶ源兵衛”という対比が面白く、源兵衛の「この人はいろんな話を知ってるから、ここは若旦那の独演会と行きましょう」という提案で時次郎が物語を披露するという意外な展開も。翌朝の時次郎が“目覚めた”場面では有名な“甘納豆”のくだりを大きな笑いに結びつけているのが見事。こんなに笑わせてくれる『明烏』は他にない。兼好ならではの逸品だ。
※公演の動画も2月24日まで配信中です!あわせてお楽しみください。
けんこう一番!第35回三遊亭兼好独演会
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