「弟子は師匠に似る」とよく言われます。落語はもちろんのことですが、長く生活を共にすることで、人となりも似てくるものです。
私の師匠、桃太郎は楽屋入りの1時間以上前に会場近くに到着し、近所の喫茶店でゆったりと時間を過ごします。これにより、落ち着いた心持ちで行動ができるわけですね。
もちろん、私もその習慣が染み付いております。師匠からいただいたものの中で、最も私に根付いているものと言っていいでしょう。本当にありがたい。
「弟子は師匠に似る」のです。
今日はそんなお話。
◇
先日、劇団四季『アラジン』を観に行きました。
突然ですが、私は大のディズニー好きでございます。ディズニーランドの年間パスポートを持っています。1人でディズニーランドに入園しますが、アトラクションには乗りません。(引くでしょう? 笑)
まぁ、それは置いておきまして、劇団四季『アラジン』。会場は新橋にある電通劇場。開演は13時。
「ということは新橋駅に10時に行けばいいかなぁ」
桃太郎の弟子としては当然の計算でございます。
9時50分ごろ、新橋駅に着きまして、近くの喫茶店で新聞を読み終わった後、いいあんばいにランチタイムになりましたので何か食べようかと近くを散策しておりました。
そして発見したのが「美華園」という大きな文字。店先にあるショーケースには、きれいな食品サンプルが飾られており、そこに付いている値札が、店内の明るさが、そして何より「美華園」という字体が、町中華ではなく本格中華のそれでございます。
少々値は張りますが、きっとその価値があると踏んだ私は勇んで入店。ランチタイムのおすすめは坦々麺。夏季限定の冷やし坦々麺もあるようでしたが、僕が注文したのは「酸辣餡掛けチャーハン」これが大正解でした!
チャーハンと餡(あん)が別のお皿で運ばれてきました。お椀(わん)型にきれいに盛られたシンプルな卵チャーハンと、酸っぱい匂いによだれがあふれ、胃袋を強く刺激します!
まずはチャーハンから。
レンゲを入れると、ホロっと崩れて湯気が立ち上がります。口に入れると程よい水分を含んでいながらも、お米一粒一粒が口の中で踊ります。味付けは薄めで、ずっと食べていられる上品なチャーハン。
そして餡。
黄金色に輝く酸辣湯。先ほども言いましたが匂いがたまらない!
とろとろの餡をチャーハンに少しかけてみる。調和の取れた色合い。これがまた見た目に美しい。そして口に入れた率直な感想は、
「すっぱ!! いやすっぱ!!!」
正直これ以外の感想はありませんでした。想像以上にお酢が効いており、酸味に顔面をドカッっと殴られるような感覚!
そして次に現れた味は、
「辛っ!いやこれ辛っ、、いや酸っぱ!!」
一瞬辛みが来ましたがそれでもまだまだ消えることのない酸味。食感に関しては、ホロホロのチャーハンと餡が絡み合い、1つの料理としての一体感が、
「いや酸っぱ!! 食感とかもうどうでもいい! これ酸っぱい! すごい酸っぱい!!」
またもや酸っぱさが1人歩きしています。
「いや本当酸っぱい! 酸っぱさしか感じない! 酸っぱい、、、あれ? なんか美味しい。あれ?? すごいおいしい。酸っぱい。おいしい。酸っぱい! おいしい! 酸っぱい!! おいしい!!」
クセになるなんて、そんな生易しいものではありません! 味としては酸味しか感じないほど酸っぱいのですが、その奥にある鶏がらスープのうま味。シイタケや野菜の歯応え。そしてチャーハンとのマリアージュ!
これはチャーハンに餡を掛けた2つの料理ではなく、紛れもない「餡掛けチャーハン」という1つの料理! レンゲが止まりません! 汗が止まりません! 酸味が止まりません! 替えがきかないとはまさにこのこと!
「あ、酸っぱい!! ごちそうさまでした!!」
料理の余韻に浸りながらお店を後にすると時間は11時45分。開演までもう少し時間があります。30分くらいお茶しようと喫茶店に入り文庫本を読んでおりました。思いのほか夢中になってしまい気がつけば12時50分。
「マズイ!」
急いで荷物を抱えて劇場に向かい、着席したのは12時57分。
師匠からは早めに行動するという習慣をいただきました。しかし、早めに来たからと言って時間に余裕を持って会場入りするというわけではない。
「弟子は師匠に似る」ものなのです。