チョコレートの融点は約32度。
ですから夏場に部屋に置いておくと溶けてしまうのです。しかし、この保存が大変に面倒な32度という絶妙な融点のおかげで官能的とも言える口溶けを可能にしているわけでございます。
何を隠そう、私はチョコレートスペシャリスト(株式会社明治主催のチョコレート検定)です。
少しずつ涼しくなってまいりました。そう! つまりチョコレートの時期がやってきたのです! 祭りです!! 祭りなのです!! 今日はそんなお話!
「ブノワ・ニアン」
偉大なショコラティエの名前であり、ベルギーのチョコレートブランドの名前でもあり、私、昔昔亭昇をとりこにしてやまないチョコレートを販売しているお店でもあります。
以前、こちらのコラムで紹介させていただき、今回は2度目のご紹介になりますが、バレンタインデーのある2月ではなくこの時期にご紹介するには理由がございます。「ミシュランガイド」と並んで世界の美食家をうならせる美食ガイドブックの1つ「ゴ・エ・ミヨ」にて最優秀ショコラティエに選出されたのです!
なんと素晴らしいことでしょう! 日本に店舗はなく、年に数回デパートの催事場に姿を見せる「ブノワ・ニアン」。知る人ぞ知るこの「ブノワ・ニアン」が美食ガイドブックに選出! 世界の美食家たちの舌をうならせたわけでございます。
しかし、自分を美食家と呼ぶような人は好きになれそうにはありません。
「あ、どうも。美食家のスティーブです」
なんか腹が立ちますね。
それでもこれを機に知名度が上がり、日本に店舗を構えるようになれば、これほどうれしいことはないのです。
そこで今回は「ブノワ・ニアン」のオンラインショップで購入できる板チョコをご紹介いたします。その名も、「NOIR AU LAIT SAN FRANCISCO DE MACORIS」。
なんて読むかは分かりません!(笑)
百貨店に出店していた際は「ノワールオレ」と店員さんが言っておりました。
このノワールオレ。
ブノワ・ニアン唯一のミルクチョコレートの板チョコでございます。
ここでチョコレート豆知識。ミルクチョコレートとはチョコレートに乳製品を加えたものを言います。反対に乳製品が含まれないものをダークチョコレートと呼びますが、市販の「ブラックチョコレート」と銘打っている製品はミルクチョコレートに分類されたりします。
話は戻りまして、ノワールオレの驚くべき点は2つ!
1つ目はその値段。オンラインストアでの販売価格なんと、2376円(税込み)。これ板チョコの値段なんです。
ランチならしゃぶしゃぶの食べ放題が食べられて、若手落語家の独演会ならお釣りが来ます! そんな高級チョコレート。
次に驚くべき点はクオリティ。まずは口に入れたときの口溶けが、既存のチョコレートとは段違いです。
この口溶けというのは「ブノワ・ニアン」全体の特徴でもあるのですが、熱したフライパンにバターを投げ入れたごとく溶けていきます。この口溶けがとても心地いいのです。
そして味は、甘味と苦味が混ざり合うというより個々でしっかりと際立っている印象です。極みつけは風味。いぶしたアーモンドのような香りを感じることができます。しかしノワールオレにアーモンドは含まれておりません。
ここで再びチョコレート豆知識。
チョコレートの香りは大きくナッツ系、フルーツ系、フローラル系、スパイス系の4つに分けられます。これはカカオ豆の種類や産地、製造工程によって決まります。
ノワールオレの場合はスパイス系の香りが強いとされておりますが、初めて食べる方はアーモンドを意識して食べてみてください。
「いやこれアーモンド入っているだろ!」と言いたくなるほど濃い香りがします。この香りのおかげで甘味がより強く感じられ、とても濃厚な味わいとなります。
一かけら、口に入れただけで板チョコを丸っと1枚食べた感覚になるのです。一度でノワールオレ1枚をおいしく完食するのは不可能だと思います。
数回に分けて楽しめる。それがノワールオレ。そして保存が難しくない時期がやってきます(板チョコにとって好ましい保存温度は15度前後とされています)。
昼下がり、おいしいチョコレートと紅茶を楽しむ。そんなすてきな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
今回は「ブノワ・ニアン」への愛情が爆発してしまいましたが、私がここまでの愛情を注げるのは、「ブノワ・ニアン」の知名度がまだ高くないということも大きな要因の1つではないかと思っております。勝手にですが、青田買いをしている感覚なのでしょう。
落語家に例えるなら、まだ無名の二つ目に目をつけていたら、その落語家が何らかの賞を取ったり、認知されていく様を見るのはとても楽しいことなのかもしれませんね。
皆さま。昔昔亭昇の青田買い。今でございます。