【二つ目グルメ】「ごぼう天? いや、丸天!」 昔昔亭昇

福岡県。このワードを聞いて皆さまが思い浮かべるのはラーメン、もつ鍋、藤井フミヤといったところではないかと思います。しかし、これを言われたちょいと偏屈な人はこう答えるのです。

「いや、福岡はうどんだよ? ごぼう天がうまいんだよ」

はい。僕は今ここで声を大にして言いたいのです! 丸天こそ最強であると!! 丸天こそ唯一無二であると!

本日はそんなお話。

先日、お仕事で福岡県に行きました。

何を隠そう僕の生まれは福岡県でございます。お仕事で地元に帰れるなんて、これ以上の幸せはないのです!

帰省する人間と観光客の考えることなんてそう大差ありません。

「おいしいものが食べたい」

これのみでございます!

あのお店に行こう。これを食べよう。そんなことを念頭におきまして、片手間で一席申し上げてきました(冗談ですよ、笑)。

「牧のうどん」

福岡を中心に店舗を構えるうどん屋さん。博多付近で育った僕にとってはソウルフードとも言える存在でございます。

週末に家族で訪れては、無言でうどんをすすっていた思い出があります。

今回私が訪れたのは博多バスターミナル店。

食券機でチケットを買うことに少しの寂しさを覚えながらも丸天うどんを注文し、着席。そして、明るい店員さんから聞かれます。

「麺の硬さは?」

ラーメン屋でよく聞くフレーズですが、『福岡ではうどん屋でも麺の硬さを選ぶのかぁ』と思ったそこのあなた! それは間違いでございます。

うどん屋さんで麺の硬さを聞かれるのは僕が、知る限り牧のうどんだけです!

「やわ」「中」「かた」の3種類の中から選ぶのですが、僕が思う牧のうどんの最大の魅力は麺のモチモチ感です。やわ麺にはやわ麺のモチモチ感があり、かた麺にはかた麺のモチモチ感があります。これはいわゆる博多うどんのなかでも唯一無二と言えるでしょう。

僕のオススメはかた麺ですが、かた麺といっても讃岐うどんに比べればブヨブヨとも言えるでしょう。しかし! その中にあるモチモチ感。いや、モッチモチ感がたまらんのです!

1分もしないうちにうどんが運ばれてきました。まずはテーブルに備え付けてあるネギをうどんの上に乗せます。うどんと一緒に運ばれてきた小さなやかんの中には、熱々のうどんだしが入っており、それをネギに注ぎます。おいしい湯気に食欲も最高潮に!

まずは熱々のだしから。昆布ベースのだしは優しく胃袋をなでるようなさっぱりとした味わい。そしてネギをかき分けた先にあるうどんをお箸で持ち上げ、ハフハフしながらすする。モッチモチの麺が口の中で踊っている内にだしを口に運ぶ!

マリアーーーーージュ!!

最高においしい! スッキリとしたあと味! そして気持ちいい! この「気持ちいい」という感覚こそうどんの至高の瞬間!

さー! ここで真打登場です! 冒頭でお話しいたしました丸天!!

博多うどんはごぼう天? いやいや! 丸天なのです!!

丸天とは、練り物の一種でさつま揚げの具なし版だと思ってください。厚みは5ミリくらいで丸い形をしており、直径は15センチほど。ペラペラの具なしさつま揚げ。こう聞くと魅力的に聞こえないのかもしれませんが、だからこそ、うどんに会うのです!

大量のネギと一緒に丸天を頰張る! うどんをすする! だしを口に運ぶ!! フニャフニャの丸天とモッチモチのうどん! ネギのいい香りを優しく包み込むだし!!

マリアーーーーーーーーーーーージュ!!!!!

温まっていく身体と止まらないお箸! 麺をすすってはだしを飲み、丸天を頰張っては麺をすする! それをだしで流し込む! ネギを追加する! やかんからだしを注ぐ! どんぶりの熱が運ばれてきたときのそれに戻る! だしをすする! 少しやけどをする! 丸天を頬張る! ネギがシャキシャキ気持ちいい!

麺をすする! だしを飲む! 麺をすする! 麺をすする!! だしを飲み干す!!!

ごちそうさんでーす!!

ポカポカの身体と幸福感に包まれながらお店を後にしました。

決して「ごぼう天より丸天の方がおいしい」と言いたいのではないのです。「丸天もおいしいよ」というお話で、もっと正確に言うと、「私、昇は丸天の方が好きだよ」という偏見たっぷりなお話でございます。

ですから初めて牧のうどんで、うどんを食べる方にはこう言いたいです。

まずはベタにごぼう天うどんをどうぞって(笑)

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