【二つ目グルメ】「カツカレー理論」 昔昔亭昇

「食いしん坊」と呼ばれ続けて31年。

こんにちは。昔昔亭昇です。

突然ですが野球のポジションにおいて、一般的にチーム内で1番守備の上手な人がショートを守っています。では、長年ショートを守るための練習を積んだ選手がサードを守ることになったとき、長年サードを守るための練習を重ねた選手と同じ仕事ができるのか-。

今日はそんなお話。

わが国において、カツカレーは今や市民権を得ているように感じます。「これ乗っけりゃうまいんじゃね?」と安易な方が発明したのではないかと勝手に思っております(偏見ですが)。

しかし! 普段食べるカツカレーは完成形でしょうか? 食材への感謝の意はあるのでしょうか!

私はこのことを皆さまに強く訴えかけたい!

決してカツカレーがおいしくないと言っているわけではありません。果たしてあれは100点なのか? 100点を目指しているのか? というお話です。

カツカレーに対して私はこのように思っております。「この料理はカレーライスの上にトンカツが乗っているなぁ」と。

「何言ってんだ? こいつ?」と思われているでしょう。

では!

おすしを食べて「この料理は酢飯の上に刺し身が乗っているなぁ」と思いますか?

天ぷら蕎麦を食べて「この料理は蕎麦に天ぷらが乗っているなぁ」と思いますか?

僕は思いません。なぜならおすしも天ぷら蕎麦も一つの料理としての完成形だからです。

ハンバーガーをバラバラにして食べたことはありますか? 1つ1つの食材を単体で食べるとお世辞にもおいしいとは言えません。しかし、それらを重ねるとなぜかおいしくなる。なぜならあれはハンバーガーという一つの料理だからです。

そう考えると、カツカレーは一つの料理として成立しているのでしょうか? あくまでもカレーライスという料理とトンカツという料理の2品を一緒に食べているだけではないでしょうか?

この現象がなぜ起こるのか。

きっとカツカレーのカレールーはカレーライスとしておいしく食べるために作られています。そしてカツカレーのトンカツはトンカツ定食としておいしく食べるために作られています。

冒頭の野球のお話に戻りますが、ショートを守るために練習を重ねた選手はそのスキルだけでサードを守ることができるのでしょうか?

答えは否です。

普段ショートを任される選手は、サードを守る選手より守備は上手です。しかし、ショートとサードでは必要な能力が微妙に違います。その微妙な違いを修正しないとサードとしては力不足なのです。修正をしっかりしないとこのようなことになります。

「ショートを守る能力でサードを『なんとかこなしている』」という状態になります。

カツカレーの話に戻りましょう。

カツカレーのカレールーは「カレーライスの能力でカツカレーを『なんとかこなしている』」、カツカレーのトンカツは「トンカツ定食の能力でカツカレーを『なんとかこなしている』」という状態だということです。

カレーライスとカツカレーは微妙に違う料理なのです。その結果、カツカレーを食べたとき、カレーとトンカツが少し別の物として感じられるのです。

カツカレーを食べたときの満足感は、カレーライスとトンカツ定食を同時に注文して、たくさん食べたときの満足感であって、カツカレーという料理を楽しんだ満足感ではないのです! ですからカレールーとトンカツを「カツカレーのため」に作る必要があるのです!

つまり! カツカレーは一つの料理ではないのです!!!!!

分かっていただけたでしょうか。

最初にも申し上げましたが僕はカツカレーがおいしくないと言っているわけではありません。むしろ好きなくらいです。

しかし、一つの料理として完成形ではないと思うんです(天ぷら蕎麦も理論的にはそうじゃないかと思われる方もいるでしょうが、あれは奇跡の産物だと思います。水槽にバラバラにした時計を投げ入れて運よくすべてのパーツがハマるというくらいの奇跡が起きていると思っています。それはまた別の機会に)。

「カツカレー理論」

似たように見えていても実は微妙に、あるいは大胆に異なるものである。

油断をせず目標のために全力で挑まなければならない。そうでないと、どんなに時間をかけても完成形には近づけないのだから…。

長々と変なことを言ってしまい申し訳ございませんでした。

でも、カツカレーのためにすべての食材を調理したカツカレーを食べてみたくありませんか?

もちろん私も世の中のすべてのカツカレーを食べたわけではありません。

おすすめがあればぜひ教えていただきたいです。

結局何が言いたいか!

どなたか連れて行ってください。

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