去年から「噺ノ目線」という落語会を始めました。
第1回の出演者は全員女性。5人が一席ずつ自作の新作を披露しました。
前々から女性だけの自作新作の会をやってみたかったのですが、新作派も女性も少ないので、なかなか実現できず、念願叶ってやっと開催することができました。
この内容だったら会の名前は「女流新作落語会」とかでもよかったかもしれません。でも、なぜ「噺ノ目線」という不思議な名前にしたのか。
それは、最近メディアなどで女性の落語家を取り上げる際、「女性目線の落語」という言葉を使うことが増えてきたなと気になっていた時期、ある出来事がきっかけでした。
新作派で同期の男性が作った落語を某落語会で私が披露しました。
いつも自作以外はアレンジを加えて台本から作り直すことが多いのですが、彼の噺は世界観ができあがっていて、私をイメージして選んでくれた噺だったので、登場人物も女性が多く、そのままで面白いと判断して、ほとんど直さないでやりました。まくらで、そのことを少し話して落語に入りました。
終演後、アンケートを読んでいると、男性のお客さまから「和泉さんの『女性目線の落語』が観たかったです」という感想が。
この「女性目線」は「和泉目線」って意味で、どんな風に変えるか、私のアレンジを楽しみにしてくださっていたのかなと、好意的に感じました。
だけど、「女性目線」がなんだか引っかかる。
ひねくれているのかもしれないけど。
男性が作った女性が主人公の噺を、女性の私が自分の目線で面白いと感じてそのままやろうと決めた。この噺の目線は誰のもの? そんなことを考えていたらある記憶がよみがえってきました。
20年以上前、新卒で入った会社で、新入社員研修を受けながら「早く仕事ができるように頑張るぞ」と心の中で意気込み、同期と各部署へ挨拶回りに行ったとき、専務から「頑張ってね。女性新入社員は『職場の花』ですから」と言われたときの違和感を。(続く)
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