【妄想亭日常】 「屋外落語のすすめ」 弁財亭和泉


先日、コロナの影響で2年間延期になっていた古民家での落語会に出演しました。会場は「日本昔ばなし」に出てきそうな茅葺屋根の建物、敷地内には小さな川と水車小屋。

なんとも風情を感じる場所。

コロナ前は座敷を使い、畳の上に高座を作り、座布団を並べて、最前列はかぶりつきの距離で開催していたそうです。

今のご時世、感染症対策を考えるとこの方法は心配。そこで、今回は雨戸を全開にして、座敷の縁側ギリギリに高座を作り、庭にパイプ椅子を並べて、お客さまに屋外で落語楽しんでいただくことになりました。

確かに感染症対策としては有効ですが、落語会としてはハードルに。屋外の落語会は屋内に比べるとお客さまに集中して聞いてもらうことが難しいからです。

二ツ目のころ、神社の秋祭りの野外ステージで落語をやらせていただいたとき、地元の元気な若者にやじられ、帰りに「落語の後のビンゴ大会の司会の方がよかった」と言われ、複雑な気持ちになった苦い思い出も。

当日は、いつもとは違う緊張で望みました。

ですが、その緊張が一瞬で吹き飛ぶ出来事が。

普段は新作派の私ですが、落語初心者が多い会場の開口一番は、まず分かりやすい古典をやることにしています。

この日の一席目は「寿限無」。

噺の後半で、長い名前の男の子を友達が学校に行こうと誘いにくる場面「寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ…長介ちゃーん。がっこう、いこー」と大きな声を出したとき、青い空に私の声が真っすぐ抜けていきました。

それは、まるで山の頂上で「ヤッホー」と叫んだときのような爽快感。屋外でマスクなしでこんなに大きな声を出しのは何年振りだろう。

アドレナリンがドバーっと出た感じのまま、あんなに苦手だと思っていた屋外での高座を最後まで楽しく勤めることができました。

天候にも恵まれ、お客さまからも開放的で気持ちが良かったと好評だったそうです。屋外での落語会は窮屈なマスク時代のニーズに意外と合っているのかもしれません。

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