【妄想亭日常】 「春よ来い」 三遊亭粋歌


新しい年が始まりました。私は、3月の真打昇進に向けて準備を進めています。昇進後は名前が弁財亭和泉(べんざいていいずみ)に変わります。

ちなみに初代です。新しい名前の入った手ぬぐい、扇子、のぼりなど、披露興行で使う必要な物はたくさんあります。デザイン決めも発注も全て自分でするので、忘れ物がないかヒヤヒヤの毎日です。

前座修行を共にした、ほぼ同期の5人の仲間たちと昇進するので、わからないことは皆に質問して情報交換しています。10年以上の付き合いなので、ほどほどに気づかいしつつ、遠慮し過ぎず、お互いの性格もわかっているので、いつも話が早いです。

さすが同じ釜の飯を食った仲間、もとい同じ某寄席裏にある激安弁当屋の、大盛りごはんにおかずは大量の揚げ物とケチャップで味付けしたパスタの250円弁当(今はもう少し値上がりしているらしい)を前座部屋で一緒に食べた仲間たちです。あのガッツリしたお弁当を完食できたあの頃は、みんな若くて胃が丈夫でした。

全員二ツ目に昇進して、それぞれ模索して、なんとか真打昇進が決まったら、コロナの世界真っ最中で、人生ってわからないものです。

「この状況の中で、真打昇進大変でしょ」とよく言われますが、逆にこんな時期なのに真打昇進を決めて頂けたことは、本当にありがたいと思っています。

噺家(はなしか)になる前、寄席ってなんでこんなに居心地がいいんだろうと思っていました。芸人はお客さまに喜んでもらうために全力で、芸は誰に対しても平等で、寄席は365日笑っていい場所で、そのお客さんの笑い声と芸人の呼吸がこの空間を作っている。日本で一番すてきな場所だ。

寄席が好き! 落語が好き! と思っていたら、いつの間にか落語家になっていました。おかげさまでずっと憧れていた寄席の主任(トリ)がとれます。

鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場、各寄席2日間ずつ大切に勤めていきたいと思います。

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