【hanashikaの時間。】「奥さまの最後の教え」 笑福亭鶴二

高校生の私が、師匠(六代目笑福亭松鶴)の奥さまに三味線をお稽古していただいてから半年が過ぎ、「さくらさくら」と「お江戸日本橋」の2曲を弾き唄いすることができるようになりました。

続いて「梅は咲いたか」「奴(やっこ)さん」「深川」「春雨」と端唄が続きました。難しくて、弾き唄いをマスターするのに、1曲ごとに3カ月はかかりましたが、にぎやかな曲ばかりで出囃子(でばやし)にも出てきますので、より一層テンションが上がり頑張ることができました。

高校生が三味線を持って「♪えー奴さん、どちら行き…」と唄っている姿は、傍(はた)で見てると異様な光景だったと思います。

奥さまは端唄や小唄、都々逸(どどいつ)などに詳しくて、お稽古に通うお客さま方もたくさんおられましたので、色々な話もうかがえました。私の場合、落語でも必要になるので、大変勉強になりました。

その次にお稽古していただいたのが「御所車(香に迷う)」という端唄です。この頃、私は、笑福亭松葉(後の七代目松鶴)兄さんに「軽業(かるわざ)」という落語をお稽古していただいておりました。

この落語の中には、端唄「御所車」の「♪雪に想(おも)いを深草の…」という部分がハメモノ(落語の中に入る鳴物)で使われます。奥さまは、それをご存じで、私に全曲、教えてくださいました。

まだまだたくさん教えていただきたかったのですが、師匠がお亡くなりになった後、奥さまもご病気をされ、三味線が持てなくなりました。だから、これが最後の曲になってしまいました。

奥さまが差し向かいで三味線をお稽古してくださった思い出は、いつまでも心の中に残っております。奥さま、本当にありがとうございました。

お知らせ

「落語と日本舞踊の夕べ」を11月26日午後6時半から、大阪市中央区の山本能楽堂で。問い合わせはトラベルニュース社(06・4708・6668)

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