笑福亭松鶴(しょかく)師匠が亡くなられた後、兄弟子の鶴笑兄さんと芸能史研究家の前田憲司先生と一緒に、師匠宅の書斎の整理などをさせていただいた関係で、3年前の平成30年5月5日、国立文楽劇場での私の独演会で、前田先生と対談することになりました。
対談の打ち合わせに行くと前田先生から、「俺、鶴二君の初舞台の時、録音した音を持ってるから、師匠のパネルをバックにその音を流してから対談しよう!」と言われました。
「えー! あの昭和58年4月8日、私が高校1年生のときに、いきなり絶句したあの時の音ですか?」
前田先生は「そうや」と言われ、まことに驚きました。満員のお客さまの前で、絶句した初高座の音声が流れたときは、本当に緊張し赤面いたしました。
音声を流した後、落語のゲストの鶴瓶兄さんが対談コーナーにも飛び入りで参加してくださいました。
私は初舞台の半年後、師匠から実家に電話があり、「新人コンクール申し込んどいたから出ろ!」と言われて出場しました。師匠宅に戻ると師匠が「あがったやろ!」と笑っておられたことを話すと、鶴瓶兄さんは「それホンマの話か?」。
「俺も入門してすぐに師匠から、『新人コンクール出ろ!』と言われたんや。俺のときは審査員に師匠がいてはったんやで。大学の落語研究会の時に覚えたネタやったから、講評で『あんなもん、落語やおまへん』て言わはったんや」
さらに、鶴瓶兄さんは続けます。「けど、帰りしなに『おもろかった』と言うてくれはった」
この思い出話に、場内は爆笑と感動の空気に包まれました。この座談会の続きは、また掲載させていただきます。
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「笑福亭鶴二独演会」を8月8日(日)午後6時から天満天神繁昌亭で。出演は鶴二のほか、ゲストに桂春蝶、桂恩狸。鶴二、春蝶、笑福亭呂好、桂白鹿で座談会「鶴志兄さんを偲(しの)んで」も行います。前売3千円、当日3500円。問い合わせは繁昌亭(06・6352・4874)。