暮れも押し迫り、穏やかならぬニュースが飛び込んできた。「来年秋頃から郵便料金値上げ」だそうだ。普通はがき63円が85円に、定型封書84円が110円に、ともに値上げ率30%以上。
 私が子供の頃、官製はがき(懐かしい響き)は40円だった。40年近くたっても23円しか上がらなかったのに、たった5年で22円の値上げ。人件費・配送費用の増加にくわえ、利用者が圧倒的に減っているなら値上げも仕方ないのだろう。もう受け入れるしかないかな。
 職業柄、いまだにはがきや手紙を頻繁に書く。今の時期ならお歳暮を頂いた方へのお礼状に年賀状(私は立春大吉に書いている)。噺家の真打ち披露や襲名披露の案内はもちろん封書だ。落語協会から送られてくる寄席の香盤表(プログラム)もご丁寧に84円かけて手元に届く(その辺はデジタルでも全く問題ないけれど)。今、結婚披露宴の招待状だってLINE(ライン)で送る人も多いらしい。落語家は完全に取り残されているな。
 すでにはがきや手紙といわれる伝達手段は「嗜好品」だ。そこに情報以上の思いを乗せたい人のみが筆を執り、切手を貼り、投函するのだろう。もうそんな時代。赤いポストもそのうちなくなるか。それも受け入れましょう。
 そのかわり、書くからには心を込めて書こう。「贅沢品」なんだから、その価値以上に心を乗せようじゃないか。深夜ラジオに投稿するのに40円かけてた頃があったのだ。書いたネタは吟味して推敲を重ねても採用されず、悔しい思いをしていた。なんていとおしい時代だろう。噺家の先輩には、お世話になった方に帰りの電車の中でお礼状を書いて、着いたら郵便局に寄って速達で出している人もいた。頂いた先方はどんなにうれしいだろう。
 年賀状なんて本当にそのうちなくなると思うが、元日いそいそと郵便受けをのぞく自分もいるのだ。
 受け取る先方がうれしくなるような、そんな便りを書きたいものです。