NHKの朝ドラ「虎に翼」が最終回を迎えました。
司法という硬い題材に、日本初の女性裁判官のヒロインを通じて、楽しくわかりやすく、そして真剣に正面から取り組んでいて素晴らしい作品。現在にも残るジェンダー差別へのアプローチにハッとさせられ、自分もまだまだアップデートしなければと思わされた半年間でした。
最近、「子別れ」という人情噺に、ちと違和感を覚えます。
「のんだくれの亭主が妻子と離縁し、なじみの女郎を身請けするもうまくいかない。自分の愚かさに気づき、改心して酒を断った男は、3年後図らずもわが子と出会う。子が取り持って元の女房の前でざんげをし、2人はヨリを戻すことになる」
ザッとこんなあらすじですが、女性からみればなんて都合のいい噺なんだろうと思われるでしょう。過去には、暴力までふるっていた亭主をこんなに簡単に許していいのかなあ。
女房は亭主への愛情がまだ残っているという前提だとしてもやっぱり…。ということで、とある落語会でこの噺をいじってみました。
せがれの金坊は真面目になって一生懸命働いている父との再会をうれしくは思うものの、父から感じる「ヨリを戻せないかな」という下心を見越します。
女房も亭主の思いに理解を示すも、決して許していません。「まだあなたを信じられない」と突き放す。
母と子には陰ながら支えてくれる長屋の仲間がいて、彼らも更生した男に同情しつつ、一定の距離をとることを勧めます。男は自分の甘さに気づき、その場を立ち去る…。古典の情緒は薄れるけど、少しは腹に落ちる筋になりました。タイトルは「子別れたまま」。
これからもやはり「子別れ」をやり続けるのですが、改作という作業を経て、従来の「子別れ」という噺の女房の悲哀やつらさに、私自身が向き合うことができるようになったかなと。噺も思考し続けることが大事ですね。
【直球&曲球】「子別れ」への違和感 春風亭一之輔
