広瀬和生の「この落語を観た! SP」落語の仮面(令和5年10月分)

三遊亭白鳥が創作した全10話の「落語の仮面」は、美内すずえの名作漫画『ガラスの仮面』を下敷きに創作した女性落語家の成長物語。これを弁財亭和泉が10ヵ月かけて連続口演する「和泉の新挑戦!『落語の仮面』」。昨年12月に始まったこの企画、遂に最終話まで和泉が見事に完走した。

第1話『三遊亭花誕生』は次から次へと物語を生み出す才能がある女子高生・寺島花が、かつて名人と謳われた女性落語家・三遊亭月影に見出され、弟子入りして三遊亭花となる噺。月影先生に特訓される花の前に立ちはだかるのが「落語は男の世界だ。女流の噺家など必要ない」という信念を持ち、月影の持つ伝説の名作『夢幻桜』の権利を狙う大東芸能社長の大徳寺益蔵。その長男で落語家であり陰で花を応援する“紫のイモの人”鈴々舎馬角、花に嫉妬する落研出身のエリート女性落語家・柳家ミミらが登場。

第2話『嵐の初天神』は、大徳寺の陰謀で楽屋入りできない花に、月影先生が上野公園で路上落語をすることを命じる噺。公園で人々を魅了する花の前に現われたのが天才落語少女・立川あゆみ。上野公園の場所を巡って2人は「前座落語グランプリ」(主催・広瀬和生)で同じネタ『初天神』で激突。2人のW優勝となったことであゆみは花をライバル認定する。

第3話『時そば危機一髪』は、楽屋入りして二ツ目になったものの大徳寺の妨害で寄席には出られない花が月影の助言でNHK新人落語大賞に出場する噺。花は「お姫さまがお忍びで蕎麦を食べに行く」という『時そば』改作で予選を通過したが、決勝当日に柳家ミミの策略で喉を潰され、お姫さまの声が出せなくなる。しかし花は急遽その声でもできる新たな『時そば』演出を考案、観客の心をつかんだ。

第4話『テレビ仮面舞踏会』は、NHK新人落語大賞決勝で注目された花が『笑点』の座布団運びに抜擢される噺。一躍人気者になった花だが、大徳寺の罠に嵌められてスキャンダルまみれに。世間に叩かれて失意の花は月影を訪れるが、有頂天になって半年間1本も新作を書かなかった花を破門すると宣告。『夢幻桜』の主人公“桜の精”の気持ちがわかれば破門は解くが、それまでは出入り止めとなる。落語をする場を失った花は公園でホームレスの“権爺”に出会う。

第5話『恋する宮戸川』は立川あゆみが主役のサイドストーリー。花との勝負で自分の限界を知ったあゆみは出演予定をことごとくキャンセルして問題となり立川流を破門されそうになるが、馬角の計らいで「落-1グランプリ」で優勝したら処分は撤回されることに。だが柳家ミミに「欠点がある」と指摘され、月影に「今のあなたには『夢幻桜』ができない。恋愛を知るために観察しなさい」と助言されてそれを実践、大きく成長したあゆみを月影は『夢幻桜』の候補と認定した。

第6話『あや姫伝説』は花が『無幻桜』のモデルに出会う噺。花は権爺の故郷が『無幻桜』の原作を書いた小説家の出身地であると知り、権爺と共に山奥の“桜の谷”へ。『夢幻桜』のモデルとなった大きなしだれ桜“あや姫さま”を目のあたりにした花は、平安時代に高貴な姫が不思議な力で村を救ったという「あや姫伝説」の世界にタイムスリップする。

第7話『短命からの脱出』は花が奇跡の復活を果たす噺。桜の精に出会った花は月影に出入りを許されるが、世間は花のスキャンダルを忘れていない。真打昇進が決まった立川あゆみとの差を縮めるために、花は石神井公園の野外ステージで3日間連続独演会を開催。野外のシチュエーションを活かした立体活劇演出の『真夏の夜の夢』(『短命』を下敷きにした吸血鬼カーミラの物語)で喝采を浴びる。

第8話『高座への螺旋階段』は花がオーディションを受ける噺。『夢幻桜』を意識して新作落語の勉強を始めた立川あゆみをフィーチュアした落語会を横浜にぎわい座が企画。月影の提案で「立川あゆみ三題噺対決」の会となり、その対戦相手を「女性の芸人なら誰でも参加できる」オーディションで決めることに。一方の花は大徳寺の陰謀で仕事が入らず落ち込んでいたが、飛び入りでオーディションを受けることを決意。見事に対戦相手の座を掴む。

第9話『二人の豊志賀』は花とあゆみの三題噺対決。2人が交互で演じて1つの噺を作っていき、片方が「続きが作れない」とギブアップするか、月影が「このサゲで噺は終了」と判断した時に終了する。お題は「トランプ」「大黒様」「さくら水産」で、テーマは「ハラハラ、ドキドキ」。あゆみが『豊志賀』の世界観でスタートさせた物語を花は自分の世界に引き寄せて見事に新作らしく仕上げて終了させた。あゆみは自分の未熟さを悟るが、花は“新作派の弊害”に陥って敗北する。

第10話『走れ元犬 真打への架け橋』は花が月影の真打昇進試験を受ける噺。あゆみと互角の対決を演じた花の真打昇進を望む世論に応えて落語協会は花の抜擢昇進を決めるが、月影は「私の試験に合格しなければ破門します」と花に『元犬』を演じさせることに。花は江戸時代の野良犬の了見を知るために狼を祀った秩父の三峯神社を訪ねる。山で遭難して一夜を過ごしたことで“野生の了見”を知った花は、助けに来た馬角の言葉をヒントに落語の極意を掴み、独自の演出を施した『元犬』で月影から真打のお墨付きをもらう。花の「真打の落語ロード」はまだ始まったばかり…。


和泉は白鳥の原作を独自の解釈により骨太の「落語家成長物語」として再構築した。卓越した演技力と持ち前の話芸を存分に発揮した和泉版「落語の仮面」は、白鳥が演じるものとは一味違う感動長編となっており、女性の演者であることが物語にリアリティを与えている。今回の「和泉の新挑戦」は、同じく三遊亭白鳥の原作を柳家三三が再構築した「流れの豚次伝」全10話にも匹敵する偉業だ。和泉にも、今度はぜひ「流れの豚次伝」全10話に「新挑戦」してほしいものである。

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