【妄想亭日常】 「新作落語の作り方」 弁財亭和泉
ときどき、自作の新作落語ってどうやってつくってるんですかと聞かれることがあります。
新作落語のつくり方にルールはありません。
自由です。
新作派の先輩方も、構成だけをメモ程度にザックリ書いて高座で話しながらつくる人、一言一句キッチリと台本を作る人、色々です。
私の場合は、気になったことや思いついたネタをスマホやアイデアノートに書き留めておいて、だんだんたまってきたらそれを基にざっくりとした構成を考えます。
その後パソコンで台本をつくり、台本を読みながら一度ICレコーダーに録音。その吹き込んだ落語を聞きながらわかりづらいところなどを修正。実際に高座にかける。
手順はこんな感じです。
でも噺はこの時点で完成ではありません。
いや、未来永劫(えいごう)噺が完成することなんてありません。
噺はネタおろし以降、毎回客席の反応を見ながら高座で微調整をして、常にアップデートしていくからです。
この間、十年以上前に作った『コンビニ参観』という自作の噺を高座でかけたとき、登場人物の性格が変わってきているなと感じました。
噺の中に大学生の息子のことが心配でバイト先についてきてしまうモンスター系のお母さんが出てきます。
かなり強烈なキャラクターです。
当初は、イヤミっぽくてヒステリックに大きな声を出す人って感じだったのですが、最近は息子が心配過ぎて周りが見えなくなってしまう噓がつけない人って感じです。
いずれにしても、めんどくさい人には変わりませんが。
でも、トゲトゲしたイヤな人じゃないんです。話し方も少し変わってきたし、不器用だけど見方によってはかわいい人になってきました。
ここ数年メディアなどで『傷つけない笑い』という言葉を耳にすることが多くなりました。
客席の反応は時代を映す鏡です。
お客さまの反応を見ながら微調整を繰り返していたら、自然と噺の中のお母さんの性格が変わっていたみたいです。
お客さまが芸人を育ててくれると言いますが、噺もお客さまに育ててもらっています。