落語家コラム

【直球&曲球】いい枯れ具合を出すために 春風亭一之輔
2025/06/12 春風亭一之輔落語家の「旬」はいつか。 そんなことを聞かれると「65歳くらいからじゃないですか」と答えてきた。なんの確証もない。年をとったら枯れてきてそれが味になるのだろう、という自分の希望的観測だ。 自分が甘かったな、と思う。…

【直球&曲球】競走馬リバティアイランドを悼む 春風亭一之輔
2025/05/14 春風亭一之輔「私、命を救っていただいたタヌキです」「え? あの時の?」「はい、その節は助けていただきありがとうございました」なんて会話で始まる古典落語『狸』。昔、幼稚園児の前でやったら「狸はしゃべんないよ!」と言われた。 「狸が…

【直球&曲球】みんなそろって春らしい噺を 春風亭一之輔
2025/04/15 春風亭一之輔直球&曲球冬の古典落語には「火事息子」「富久」「味噌蔵(みそぐら)」「二番煎じ」「鼠穴(ねずみあな)」など、火事を題材にした名作が多い。 日本家屋は主に木と紙と土でできていて、かつ乾燥した気候のため、冬場は昔から火事が日常茶飯…

【直球&曲球】移動はつらいよ 春風亭一之輔
2025/02/27仕事柄移動が多い。先週金曜日の夜は三重県紀北町で独演会。東京駅から午前11時48分発の東海道新幹線に乗り込み、名古屋駅で快速「みえ」に乗り換え、途中多気駅で下車、ホームで30分待ち、各駅停車に乗り換え紀伊長島駅着、車…

【直球&曲球】かるたで深まる郷土愛 春風亭一之輔
2025/01/21 春風亭一之輔県外の人に「あなたの出身県の名所・名物・出身の偉人を教えてください」と急に聞かれたら、千葉県出身の私はけっこう困る。 ここからは私個人の感想。千葉県民は千葉愛が…そうでもない。下総、上総、安房と気質もバラバラで交…

【直球&曲球】笑えない早合点 春風亭一之輔
2024/12/18 春風亭一之輔毎年恒例の「落語一之輔」公演を終え、今年の大仕事が片付いた。 楽日に「万両婿(小間物屋政談)」をネタおろし。小間物屋の小四郎が旅の最中、追い剝ぎにあった男に遭遇する。気の毒に思い着物と金を都合してやるが、男はその…

【直球&曲球】1杯だけの祝杯 春風亭一之輔
2024/11/08 春風亭一之輔先日、「NHK新人落語大賞」を見た。東京は二つ目、上方は入門15年目までが出場資格を有する、若手落語家の登竜門的賞レースの老舗だ。去年と今年は生放送。一昨年は収録で「放送日まで結果は伏せてください」という局からのお…

【直球&曲球】「子別れ」への違和感 春風亭一之輔
2024/10/03 春風亭一之輔NHKの朝ドラ「虎に翼」が最終回を迎えました。 司法という硬い題材に、日本初の女性裁判官のヒロインを通じて、楽しくわかりやすく、そして真剣に正面から取り組んでいて素晴らしい作品。現在にも残るジェンダー差別へのアプ…

三遊亭兼好のイラスト日誌(16)
2024/10/03 三遊亭兼好もし過去に戻れるなら、私は部活に「吹奏楽部」を選ぶだろう。トランペットやトロンボーンをカッコよく吹いて、皆にモテたに違いない。学生の時モテなくても、今より素敵な大人になっていた筈だ。少なくとも、楽器を口にしている間は今み…

【直球&曲球】男女別学のメリット 春風亭一之輔
2024/08/29 春風亭一之輔本紙23日付の社会面によると、「埼玉県教育委員会は県内12校の男女別学高校の共学化について『主体的に共学化を推進していく』とする報告書をまとめた」とのこと。 今までも共学化の話はあったが、賛否両論ありなかなか前へ…

三遊亭兼好のイラスト日誌(15)
2024/08/25 三遊亭兼好小すみさんの高座は「音楽に対する愛」にあふれている。技術の高さ、喋りの面白さはもちろんだが、楽器や歌に対する愛情が会場全体に行き渡って、聴いている皆が幸福感につつまれる。しかも本人は無邪気に、当たり前にこなすから素晴らし…

【直球&曲球】噺家はやわじゃない 春風亭一之輔
2024/07/25 春風亭一之輔今、落語の全国ツアーの真っ最中。ありがたいことに新規のお客さんが増えているので、開演前のマナー喚起の場内アナウンスは私自身がつとめている。 ざわついてる会場に「どうも、一之輔です」とアナウンス。やはりアルバイトがやる…