「産経らくご」で人気評論を連載中の老舗ヘビメタ雑誌編集長にして落語評論家の広瀬和生氏が、過去に配信した公演の中から珠玉の一席を毎月セレクト。
11月は2022年7月29日 「ザ・柳家さん喬 其の八 百花繚乱さん喬噺」より、柳家さん喬 「ちきり伊勢屋」をお届けします。
さん喬師匠が〝難物〟に挑んだ高座を、広瀬氏の名文とともにご堪能ください。
====
裕福な質屋の若い主人が高名な易者に「あなたは来年2月15日に必ず死にます」と言われるのが発端の『ちきり伊勢屋』は、通して演じると3時間にも達するため、「上」「下」に分けて演じられることが多い長編で、昭和の名人では六代目三遊亭圓生と八代目林家正蔵が持ちネタにしていたが、それ以降の演者には「難しいうえに面白くない噺」と敬遠され、よほどの落語ファンでも「ナマで『ちきり伊勢屋』を聞いたことがない」という時代が長く続いた。その難物を、1時間で全編語り終える大ネタ人情噺として現代に蘇らせたのが“正統派の雄”柳家さん喬だ。いや、あえて言うなら「蘇らせた」というより「創作した」という表現のほうが相応しいかもしれない。さん喬はこの噺に本来は存在しなかったロマンスの要素を持ち込み、実にドラマティックな人情噺として再構成したのである。さん喬の『ちきり伊勢屋』がもたらす大きな感動を、ぜひ体験していただきたい。(広瀬和生)
===
動画はこちらから!(11月1日~11月30日までご覧いただけます)
※ご視聴には『産経らくご』(月額1100円)への入会が必要です。初回ご登録の方に限り、30日間無料でお試しいただけます。
詳細・お申込みはこちら