「産経らくご」で人気評論を連載中の老舗ヘビメタ雑誌編集長にして落語評論家の広瀬和生氏が、過去に配信した公演の中から珠玉の一席を毎月セレクト。
12月は2021年7月21日「けんこう一番!第17回三遊亭兼好独演会」より、三遊亭兼好 「応挙の幽霊」をお届けします。
広瀬氏のコラムでは、演目の歴史をひもときつつ、兼好演出のすごさに迫ります!
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「柳の木の側に足のない幽霊がいる」というイメージを定着させたのは江戸時代の絵師、円山応挙の幽霊画と言われている。とある画商が得意先の旦那に「応挙の幽霊画を手に入れた」と言って高く売ろうとするのが『応挙の幽霊』という落語で、田舎で安く手に入れた幽霊画がまんまと高値で売れた祝いに画商が一人で酒盛りを始めると、絵から幽霊が抜け出てきて酒の相手をし始める。六代目蝶花楼馬楽の演目で、三遊亭圓弥や先代の入船亭扇橋なども演じたものの面白味が少なく、あまり人気のある演目ではなかった。この地味な演目に個性溢れる演出を施し、格段に面白い噺に仕上げたのが三遊亭兼好だ。兼好の『応挙の幽霊』は幽霊と画商の酒盛りの様子が実に楽しく、後半は意外な展開を見せて独自のサゲに至る。陰気で地味だった『応挙の幽霊』を陽気で賑やかな演目に変身させた兼好のオリジナル演出の妙を、ぜひ堪能していただきたい。(広瀬和生)
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動画はこちらから!(12月1日~12月31日までご覧いただけます)
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