夏の全国ツアーが始まった。今年は27公演。開演前の場内アナウンス(影アナ)はスタッフの仕事なのだが、今年は私がやってみることにした。
「携帯電話、スマートフォンの電源は必ずお切りください…切りました? …切ってない人いるでしょ? …切り方が分からない人は恥ずかしがらず分かりそうな人に聞いてください。鳴るともっと恥ずかしいですよ。終演間際の一番いい場面で鳴りがち。家族が車で迎えに来る予定のおじいちゃんおばあちゃん。『まだ終わらないの?』なんて電話がかかってきますよ。切りましょう。 …切った? これだけ言って鳴ったら、ホント出るとこ出るよ!」みたいな。
「私語もやめてくださいね。『このあとこうなるよ』とか『この噺(はなし)のオチはね…』とか、話しかけられても隣の人は無視してください。いっそ軽蔑の目で見てください。その人は公衆の場と自分の家の茶の間の区別がつかない悲しい人です。だいたい古典落語なんてみんなあらすじ知ってんだから、分かっても全然偉くないからね。笑うのはいいけど、しゃべっちゃダメですよ」みたいな。
「帽子も取ってください。後ろの人の邪魔ですのでね。〇パホテルの社長さんももしおいででしたら今はお取りください。〇ャンドル・ジュンさんのピアスは問題ありません」みたいな。
これくらい影アナで言っておいて、オープニングトークで「スマホの電源、まだ切ってない人は手を挙げて!」と言うと、1人くらい挙げる。「なんで切らないの?」「持ってないから!」「うるせえよ(笑)」みたいな。
ここまでやらないといけないのもどうかと思うが、背に腹は代えられない。落語協会公式YouTubeでの「寄席鑑賞マナー動画」がバズっている。よかったらごらんください(※春風亭一之輔さん本人も出演。ちなみに、動画の舞台裏を撮影したメーキング映像もあります)。正直なところ、マナーがなってない人は、新聞をちゃんと読んでる皆さん世代に多いですから…。