【妄想亭日常】「新作落語の扉」 弁財亭和泉
寄席では元日から10日までを初席(はつせき)、11日~20日までを二之席(にのせき)といいます。私が所属している落語協会では、真打になると必ず初席に出番をいただけます。
とはいっても、お正月は大人数が入れ替わり立ち代りの顔見世興行なので、私の出番は7分ほど。時間は短めですが、お正月から寄席で落語ができるのは本当にうれしいです。
新作派のお正月興行といえば、毎年恒例プーク人形劇場での新作落語お正月寄席。昨年お亡くなりになった新作落語のカリスマ三遊亭円丈師匠が作った新作落語の会です。
協会の垣根を越えた新作派が勢ぞろいして、先輩後輩関係なく自由な落語を高座でぶつけ合う戦いの場所です。このプーク人形劇場の新作落語の興行がなかったら、三遊亭円丈師匠がいなかったら、私は新作落語をつくっていなかったと思います。
2009年6月、私は二ツ目に昇進しました。二ツ目に昇進すると、都内の寄席4軒、各10日間、計40日間の出番がいただけます。私の二ツ目の披露興行は池袋演芸場から始まりました。
主任が新作派の師匠で、初日にお客さまからお題を3つもらってその場で噺をつくる三題噺でトリをとっていました。その光景にただ驚き、即興とは思えない噺のクオリティーに感動しました。
数日後、その師匠と話す機会があり、当時古典派だった私は「新作に興味はあるのですが、自分ではつくれないと思います」と伝えると、「最近円丈師匠が『ろんだいえん』て本を出したんだけど読んでみたら」と薦めてくれました。
そこには、新しい噺をつくり続けている円丈師匠だからこその落語論が力強い言葉でつづられていました。
「古典をしたきゃ、まず新作をやれ!」
落語を知るためには、まず落語を自分でつくるのが大事だというようなことが書かれていました。
この言葉で、前座修行が終わり自由になったのはいいけど、これからどう進むべきか迷っていた私の心が動きました。一生縁がないと勝手に決めつけていた新作落語への扉を開いてくれたのです。
(次回へ続く)