江戸家小猫さんが五代目猫八を襲名しました。「動物ものまね」の名跡が華々しく復活。親子代々、動物の鳴きまねをして生計を立てている…冷静に考えると、いい意味でどうかしてる一家。
われわれ人類が言語を持ち合わせてない頃…例えば、マンモスを仕留めた打ち上げかなんかで、「だれかかくし芸でもやってみろ!」「じゃ、この辺で私がこのマンモスの断末魔の叫びを再現しましょう!」的なお調子者がいて、「パオーン!」「うまいねー!(拍手)」なんてなことがあったはず。それが脈々と江戸家一門につながって…るかどうかは分かりませんが、「動物ものまね」という芸は有史以来、最も古い芸能ではないかと思います。
新・猫八師匠は大変な学究肌で、全国の動物園を巡り飼育員さんと親交を深め、動物の鳴き声を求めてアフリカまで渡るという芸熱心さ。お家芸のウグイスはもちろん、テナガザル・ハシビロコウ・ヌーなんて先人が手がけなかった動物の鳴き声や、その生態までも笑いを交えて聴かせてくれます。
私が高座の袖で聴いていても、達者な芸にうなり、いい意味での「バカバカしさ」についついニヤリとしてしまいます。動画を検索すればなんでも聴けて、AI(人工知能)に聞けばなんでも教えてくれる世の中ですが、一人の生身の芸人が足を使って知識を得て、稽古を重ねて磨いた芸を、ライブで味わう楽しさは無類です。
噺家(はなしか)以外の芸人を寄席では「色物」と呼びます。普段トリをつとめませんが、猫八さんはいま披露興行で、トリでウグイスを鳴いています。猫八さんは私と同学年。恐らくともに寄席芸人として年を重ねていくでしょう。40年経(た)ってお互い元気、私がトリで猫八さんに「膝がわり」というトリの前の出番でウグイスを鳴いてもらうのが、私の夢だったりします。新・猫八師匠のインテリジェンスあふれる「バカバカしき」至芸を聴きに、寄席へ足をお運びください。