高校生のとき、休日は師匠(六代目笑福亭松鶴(しょかく))の元に通わせていただけることになり、着物の畳み方などを教わり、落語会にお手伝いにも行かせていただけるようになりました。
当時、上方落語協会主催の島之内寄席が京橋にあったダイエーで開催されていました。落語会の会場に着き、開演前にはじめにやらせていただけるのは下足番です。お客さまのお履物をお預かりして、下足札をお渡しする仕事です。
お客さまが一段落つかれたところで、楽屋に行くことができます。楽屋に行かせていただくと師匠が、その会の最初に出演される桂米団治(当時小米朝)お兄さまに「今日『質屋芝居』をやろうと思てんねんけど、陰の声をやってくれるか?」と言うと、お兄さまが「はい。分かりました」とおっしゃっておられました。
私は何のことか、さっぱり分かりませんでした。お恥ずかしい話、その時は「質屋芝居」という落語も知りませんでした。丁稚(でっち)と番頭が、仮名手本忠臣蔵の三段目のまねを蔵の中でする落語です。この落語はハメモノ(落語の途中で入る三味線や太鼓、ツケなどによる効果音)が、ふんだんに入る落語です。さらに陰の声(別の演者が舞台袖からセリフをしゃべる)との掛け合いも入ります。
師匠が高座に上がられ、落語に入ると、ハメモノが入り舞台袖のお兄さまと見事な掛け合いです。それを舞台袖で見せていただいた高校生の私は衝撃的でした。リハーサルもなしで、落語家の世界はすごいなぁと感動しました。
その思い出の落語「質屋芝居」を、今年は桂米団治お兄さまにお稽古していただき、朝日生命ホールで9月17日(土)午後5時半開演の「笑福亭鶴二独演会」で、演じさせていただきます。皆さま、よろしくお願いいたします。
笑福亭鶴二の道頓堀ほのぼの落語会
大阪市中央区の「道頓堀ミュージアム並木座」で5月29日(日)午後2時開演、3時半終演。出演は笑福亭鶴二。前売り2500円、当日3千円。問い合わせは笑福亭鶴二後援会・辻(090・3263・0435)。