長い新型コロナウイルス禍で、落語界も中止や休館などで打撃を被り、国の支援金を申請するなどしています。ところがこの支援金、フリーランスの仕事をしている人も対象となっているため、その仕事を本当にやっているかという証明が必要となります。
会社員の場合は社員証など、身分を明らかにする公の物がちゃんとありますが、われわれはいわば個人事業主なので、その証明を所属する上方落語協会に発行してもらったり、支援金をもらうのも一苦労です。
ところが昔、われわれ噺(はなし)家にも「遊芸稼ぎ人」という鑑札が国から発行されていたのです。「不動坊」という落語の中にもこの「遊芸稼ぎ人」が出てくるのですが、いわば芸人であるという証明書を国が発行し、芸人はそれを携行していたそうです。
実際に二代目春団治の遊芸稼ぎ人の鑑札を見ましたが、はがきほどのサイズに芸名や本名が記載されている。当時の芸人たちは「これでわしらも国から認められた」と喜んだそうですが、なんのことはない。今までろくすっぽ税金も納めていなかった芸人たちに鑑札を与え、きっちり税金を徴収しようというお上の罠(わな)だったようです。
さてお知らせです。
3月23日(水)午後6時半から、動楽亭(大阪市西成区、大阪メトロ動物園前駅1番出口すぐ)で「ベテラン前座噺の会」を行います。芸歴30年以上のベテランが、前座がするような軽い噺ばかりをする珍しい落語会です。出演は桂千朝、桂小春団治、桂福楽、笑福亭竹林、桂文華。メール(kokusairakugo@gmail.com)からの予約2500円、当日3千円。