3月16日(木)、「J亭落語会 柳家三三独演会」。 演目は以下のとおり。
三遊亭伊織『あわびのし』
柳家三三『長屋の花見』
~仲入り~
柳家緑君『棒鱈』
柳家三三『幾代餅』
開口一番は昨年11月に二ツ目に昇進したばかりの三遊亭伊織。歌武蔵門下で、前座名は「歌むい」。このキャリアにしては実に上手い! ダラダラ演ると長くなる『あわびのし』を、コンパクトにまとめて本来のサゲまで演ってダレ場なし。将来が期待できる若手の有望株の登場だ。
三三の一席目は季節ネタで『長屋の花見』。師匠の小三治と同じように、正統派の『長屋の花見』を真っ当に演じて面白い。渋口の酒を「狭山かと思った」と言い(「宇治」ではない)、「酒柱が立ちました」へ。五代目小さんや小三治はこれがサゲだが、三三はさらに続けて、風流に一句詠む。「長屋中 歯を食いしばる 花見かな」…これは立川談志が演っていた。小さんや小三治の『長屋の花見』ではもっと前のほうで入ってくる「大家さん、玉子焼きひとつください」「おお、いいね」「あっ、そんなシッポじゃねぇとこ」をここへ持って来てサゲ。
ワイガヤ系の『長屋の花見』をきっちり演じて休憩を挟み、三三の二席目は江戸っ子が田舎侍をバカにする『長屋の花見』。五代目小さんの演目で、一門では柳家さん喬が得意にしている他、孫弟子では立川談春が抜群に面白い。小さんや談春は演者の「フラ」(ちょっとした口調の可笑しさとか)で笑わせるが、三三はギャグで笑わせる、という感じ。
三三のトリネタは『幾代餅』。職人が高嶺の花の花魁と夫婦になるという、『紺屋高尾』と同工異曲の噺。『紺屋高尾』は六代目三遊亭圓生と立川談志の二系統があり、前者は五代目圓楽、さらに現役で三遊亭兼好が継承しており、後者はもちろん談志一門が継承しているが、談春の型は柳家花緑が教わって三遊亭遊雀にも伝わっている。『幾代餅』は志ん生から馬生・志ん朝へと継承された噺だが、今では古今亭・金原亭の演者のみならず柳家さん喬・柳家権太楼の両巨頭も演っている。
三三は圓生の噺を演るイメージがあったので、『紺屋高尾』ではなく『幾代餅』というのはちょっと意外だが、寄席の世界では大ネタ然とした『紺屋高尾』より笑いの多い『幾代餅』のほうが使い勝手が良く、圓楽一門と談志一門が出演しない寄席の世界では『幾代餅』が主流だから、三三が『幾代餅』なのも当然かもしれない。実際、三三はこの日の高座でも「森友学園」みたいな時事ネタや「場所がJTだけに」「これで町を歩くと俵星玄蕃を歌う柳亭市馬と間違われる」といったギャグで笑いを取っていた。さん喬のように人情噺らしく演るのかと思いきや、あくまで笑いの多い演出を貫く『幾代餅』だった。