僕の母は料理上手でした。得意料理は「がめ煮」(筑前煮)です。
ただ、大量に作ってしまうのでそれを3日かけて家族全員で食べ切るという作業的な食事が続くのですが、食べ切った次の日はお家に帰るのがとても楽しみだった思い出があります。
そんな料理上手の母が1年に1度起こす奇跡!
本日はそんなお話。
私事ですが下北沢に行く機会が多々あります。
下北沢といえば、数年前、世界各国で発行されている情報誌「タイムアウト」の調査で「世界で最もクールな街」と題したランキングで第2位となった街です。
音楽、演劇、お笑いなど、さまざまなカルチャーがひしめき合う下北沢には熱意を持った若者たちが集まっており、必然的にお洒落(しゃれ)な方々が多く見られます。
何を隠そう私、昔昔亭昇はそんなお洒落な街の美容室に通っております!
お洒落さんが集まる街で自分の身だしなみを整えるのは人前に出る芸人という商売がら、当然のことだと強く思っております!
まぁそんな私の美意識は一旦置いておきまして。
先日、下北沢の1000円カットの帰り道、お気に入りのお店に寄りました。
その名も「眠亭」。
「眠亭」と聞いてピンとくる方も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、今や大人気の俳優さんやロックスターが昔アルバイトをしていたお店として有名です。
気になる方は検索してみてください。
いわゆる街中華です。
ラーメン、チャーハン、餃子と全てが最高においしいのですが、良い意味で高揚感はなく、とても落ち着く味わいとなっております。
ホテルの中華料理は毎日食べるといやになりそうですが、こちらのお店は毎日でも食べられる、そんな味とでも言いましょうか。
もちろん私はお店の大ファンでございまして、定期的にお邪魔しております。
その日は大きな決意を胸に入店いたしました。
今日はウインナ定食を食べる。
「ウインナ定食 950円」
皆さま。中華屋さんでこのようなメニューを発見したら何を思われますでしょうか。
「ウインナ? えっ、定食ってどういうこと? シャウエッセン6本とご飯とみそ汁とお新香かな? いや950円高くない? うーん。ラーメンにしとくか…」という感じだと思います。
ウインナ定食という謎のネーミング。950円という絶妙に高い価格設定。
何より、もし本当にウインナが5、6本とご飯が来たときの一食無駄にした感。
しかし! 私は定期的に通ういわば常連! 幾度となくこのメニューをスルーして来たからこそできる決断!
今日の昼食・・・賭けに出る!!!
そう意気込んでウインナ定食を注文しました。
町中華の料理提供の速さは異常です。まるで注文をすることが分かっていたかのようなスピードでウインナ定食が運ばれてきたのですが、
「うん? 野菜炒め?」
そう。ウインナ定食の見た目はウインナ入りの野菜炒め。
玉ねぎ、ピーマン、たけのこ、マッシュルーム、キクラゲ。そしてウインナ5本。
鳩が豆鉄砲を食った顔とはこのことですね。理解が追いつかず、少しの間それを眺めておりましたが、すぐさま空腹感を思い出し、箸を手に取りました。
うっ、うまい!!
味付けはおいしい野菜炒めのそれ!
玉ねぎ、ピーマン、たけのこの歯触りがよく、キクラゲ独特の食感も素晴らしい!
マッシュルームの香りがクセになり、何より硬めのウインナがお米を呼んでいる!
ご飯を口に運ぶ。硬めのご飯がうまい! もう1度言います! 硬めのご飯がうまい!
止まらないんですよ。ご飯とウインナ炒めのループが!
2杯目のご飯を掻き込み完食したときの満足感。思考停止した脳が考えられる言葉はただ1つ。
「うまかったぁ」
ふと母親のことを思い出しました。
母親が1年に1度くらい奇跡的にできちゃっためちゃくちゃおいしい野菜炒めってありませんでしたか? 次の日同じ料理を頼んでも、なぜか昨日の味にはならない。
そんな1年に1度起こる奇跡の味! そんな味が、そこにはありました。
ウインナ定食。別名。米泥棒定食!
ごちそうさまでした!!