私は高校時代、学校が休みの日には、師匠の故・六代目笑福亭松鶴(しょかく)宅に通い、兄弟子たちと一緒に師匠宅の掃除などをしながら、きものの着方やたたみ方を教えていただきました。師匠が地方へ巡業に行かれると、師匠の奥さまが晩ごはんのとき、修業中の弟子と一緒によく宴会をなさいました。
私はいつも、夕方に帰らせていただくのですが、夏休みのときは、何度か宴会に参加しました。奥さまは元々、芸者さんをなさっておられましたので、三味線や踊り、お座敷遊びが大変好きでした。
食事が一段落すると、奥さまが三味線を弾かれます。最初は寄席囃子(よせばやし)からで、曲は師匠の方々の出囃子です。松鶴「舟行き」▽米朝「三下(さんさが)り鞨鼓(かっこ)」▽春團治「野崎」▽先代文枝「軒すだれ」▽先代染丸「たぬき」-。そして、にぎやかな「だんじり」を加えた6曲が定番でした。
私は、兄弟子たちと一緒に奥さまの三味線に合わせて、太鼓や鳴り物を担当しました。その後は、都々逸(どどいつ)の弾き唄い、お座敷唄や新内(しんない)の「蘭蝶(らんちょう)」の前弾きなども、なさっておられました。
三味線が終わると次は、奥さまが弟子たちと対面でいろいろなお座敷遊びをなさいます。私も一緒にやらせていただきました。奥さまは、三味線でも、お座敷遊びでもすごく気合が入っておられました。奥さまの宴会、本当ににぎやかでした。この続きは、次の担当回で書きます。
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「笑福亭鶴二独演会 in Nara」は古々粋亭(ここいきてい)(奈良市小西町9)で8月22日(日)午後2時開演。前売2千円、当日2500円。問い合わせは古々粋亭(0742・94・7707、https://rakugo-nara.com/)