子供の頃、「人にやさしく、意地悪はしてはいけない」と教わってきた。でも世の中には「意地悪」があふれている。ある人にとって便利なモノは、案外それ以外の人には「意地悪」なものが多い。
私にとって「現金は使えません」はなかなか意地悪だ。レジに並んだ末の「キャッシュお断り」は身体にこたえます。そのせいでクレジットカードを作ってしまった。意地悪のおかげで前進したのかもしれない。
あとスマホでQRコードを読み取って注文する飲食店。年配の方がマゴマゴしてるのもかわいそうだし、それにブチギレた客に怒られてる店員さんもかわいそう。
公園のベンチの形状がとやかく言われている。座面が背もたれ無しのアーチ形だったり、横になれないように等間隔の肘掛けがガッチリついていたり。駅のホームのはりにトゲトゲを敷き詰めて、ハトがとまれないようにするのに近い。「そこに長居するなよ」「寝転がったりするなよ」ということなのだろう。
「そんなやつらをどーにかしろよ」という苦情が来たので、こんな形はいかがでしょう…。要するに意地悪大喜利。
「居座る人を排除する意図はないんですけどね、こんな斬新なデザインのベンチはいかがですかね?」なんて調子のいい言葉の裏に意地悪がチラついてるのが嫌な感じ。
だったら「ホームレス対策だよ! 文句あるかよっ!」「このカタチなら寝っ転がれねえだろ! まいったか!」「座り心地はイマイチだけど、ないよりましだろ。ちょっと休んだらどっか行ってくれよな!」とハッキリ言ってくれた方がまだ潔い。
強情なハトはトゲトゲのあいだをぬって無理矢理とまってたりするけども、人間はそうはいかないからなあ。ハトは他に行き場があるけど、落ち着いてベンチで休みたい人はどこに行けばいいですかね。地べたにムシロを敷いて横になったらなおさら邪魔者扱いだし。みんなが幸せになる最良のカタチってのはないんでしょうか。