広瀬和生の「J亭を聴いた」(平成28年9月分)<75>

9月8日(木)、「J亭落語会 柳家三三独演会」。 演目は以下のとおり。

 

柳亭市楽『浮世床』
柳家三三『笠碁』
~仲入り~
柳家三三『お血脈』
柳家三三『蜘蛛駕籠』

三三の『笠碁』、以前よりグンと良くなった。実年齢を重ねてきたからだけではない。以前は五代目小さんの『笠碁』の三三流解釈、という色が強く、どうしても小さんと比べてしまったが、今は全然違う。きっちりと「三三の『笠碁』」となっている。それは要するに、随所に「自分の言葉」が出ているということだ。そしてそれは、「台本として」作られた台詞というよりも、三三自身が喧嘩したご隠居二人の「了見」になっているから自然と口をついて出る言葉、という感じだ。特に面白いのが、番頭を相手にブツブツ文句を言う「待ったをした方の」隠居の描き方。そこに三三自身が充分投影されている気がする。最後の場面で「一番来るか!」「よーし行きましょう!」の勢いの良さでドッと笑いを誘うのもさすが。「まだ笠を取らない」でサゲずに続けて「少しくらい水がポタポタしてもいいでしょう」「いや、そうはいかない。久しぶりに打つんだ、水入らずでいきましょう」でサゲ。粋な演出だ。

三三の二席目はこのところ重点的に高座に掛けている感のある『お血脈』。これがまた実にいい。マクラからハイテンションで飛ばしてお釈迦様の話に持っていくところの面白さは、「高級チョコレートの言い立て」も含めて三三ならでは。地噺は演者の魅力がそのまま反映されるわけで、今の三三が以前の「テクニック志向の演者」というイメージから完全に脱却したことを物語っている。とにかく全編「エネルギッシュにしゃべりまくっている」という感じで、聴き手をグイグイ引き寄せる。時事ネタのオリジナル・ギャグも大量に交えてテンポ良く進んでいき、一気にサゲに持って行く。ダレ場、まったく無し!

三三はそのまま高座に残って三席目の『蜘蛛駕籠』へ。三三は前回(六月)もこうした「前半で長めの演目、 後半は滑稽噺を二席」という構成だったが、これは良いアイディアだ。「前半で笑わせ、後半は大ネタで」というのが近年の独演会のパターンとなってきている感があるけれども、必ずしもそうではなくてもいいのだ、という逆転の発想を三三は身をもって教えてくれている。演者として一皮剥けたことが、こういうところからもうかがえるのではないだろうか。『蜘蛛駕籠』は駕籠かきを翻弄する酔っ払いの描き方が秀逸。いかにも面倒くさい酔っ払いで笑える。充実した会だった。

筆者紹介:広瀬和生
1960年生まれ、東京大学工学部卒。落語評論家。毎日のようにナマの高座に接し、現在進行形の「今の落語」の魅力を語る第一人者として知られる。『この落語家を聴け!』『21世紀落語史』『噺は生きている』『僕らの落語』『落語家という生き方』『談志は「これ」を聴け!』『なぜ「小三治」の落語は面白いのか?』等々、落語の著書多数。音楽誌「BURRN!」編集長でもある。
 
 

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