【妄想亭日常】「寄席は総合芸術」 弁財亭和泉
真打になって初めて定席の興行に顔付けをしていただきました。交互出演でしたので、スケジュールの都合もあり私の出番は4日間でした。
二ツ目のころは、開口一番の前座の後か、仲入り後の食いつき(お客さまが休憩時間に買ったお弁当をまだ召し上がっている時間なので食いつきというそうです)の出番が多かったのですが、今回は前座、二ツ目、色物、先輩の真打があがった後、十分客席が温まっている時間にあがらせていただきました。
前に出た芸人たちの余韻が残っている客席を感じながらネタ選びをして、高座を勤め、次の芸人につないでいく。前座から尻上がりに盛り上がっていって、主任(トリ)がゴール。そんな寄席の興行は、総合芸術といわれております。
私が出演させていただいた興行の主任(トリ)は古典落語の本寸法、春風亭一朝師匠。他の出演者も古典派の師匠方ばかり。
この総合芸術を私の新作落語で壊してはいけない。
ダメ男好きのダメ女とか、ナマハゲのバイトとか、とんがりコーンの食べ方でけんかする夫婦とかの噺(はなし)を避け、寄席を意識してつくった、古典と古典の間に挟まれても邪魔にならないような噺を選ぶように試行錯誤。真打になって初の定席の高座は想像以上にスリリングでした。
先輩たちがいっていた「百遍の稽古より一回の高座」この言葉が身に沁みました。
私たちは出番の前に「お先に勉強させていただきます」、高座を降りた後は「お先に勉強させていただきました」と楽屋で挨拶をします。今回も、寄席の高座のおかげで大変勉強になりました。
いま、この私たち芸人にとって大事な寄席が、コロナの影響でピンチです。落語協会と落語芸術協会が協力して寄席を助けるためにクラウドファンディングを立ち上げるくらい深刻です。
「ご来場お待ちしています」といいづらい世の中ですが、寄席は感染症対策バッチリしています。
こんなときだから、芸人たちはいつも以上にやる気です。
無理のない範囲で寄席の総合芸術体験をぜひ!