広瀬和生の「J亭を聴いた」第4回大手町二人会 白酒・一之輔(平成30年9月分)<95>

「J亭スピンオフ企画 隔月替わり二人会」、 9月20日(木)は「白酒・一之輔」二人会。演目は以下のとおり。

 

金原亭馬久『臆病源兵衛』
春風亭一之輔『のめる』
桃月庵白酒『首ったけ』
~仲入り~
桃月庵白酒『権助魚』
春風亭一之輔『三井の大黒』

開口一番は二ツ目になってもうすぐ3年になる馬久。演じたのは先代馬生の演目『臆病源兵衛』で、従来のサゲは死んだと思い込んで根津を彷徨う八五郎が出会った老婆の「娘のおかげで極楽だ」という台詞。一之輔もその演り方だが、このサゲは今イチわかりにくく、この後に高座に上がった一之輔は「三大キョトーン落ちのひとつ」と言っていた。なので白酒はこれを改め「地獄に仏だ」とサゲていて、これは実にわかりやすい。この日の馬久は老婆が従来のサゲの台詞を言った後、八五郎が「ギャーッ!」と叫んで逃げて行き、老婆が「あんな怖がり見たことねぇ」と呟いてサゲた。

一之輔の一席目は『のめる』。「つまらねぇ」が口癖の半公と「一杯飲める」が口癖の八五郎が互いにそれを口にしたら一円払うという賭けをする。その賭けに勝つ方法をご隠居に聞きに行った八五郎の物わかりの悪さとそれにイラッとするご隠居のやり取りが最高に可笑しい。「沢庵大根100本、醤油樽に詰まろうかね」作戦を授けられたのにロクに聞こうともせず適当に応対し、いちいちどうでもいい反論をし、「それ、やらなきゃダメですかね」と嫌がる八五郎は一之輔だけだ。イラッとして「帰れ!」とキレるご隠居という構図は一之輔版『短命』を思わせる。半公の許を訪ねる八五郎の異様な興奮ぶりと半公の対応に狼狽える様子もバカバカしくて素敵だ。半公に返り討ちにあってご隠居から反撃の詰将棋作戦を教わった八五郎の「できれば大根よりこっちが先じゃないですかね」という指摘にも笑った。従来の『のめる』の形を崩すことなく、登場人物を生き生きと演じることで、このシンプルな噺をここまでの爆笑編にする一之輔は本当に凄い。

白酒の一席目は志ん生の演目として知られる廓噺『首ったけ』。馴染みの紅梅花魁が来ないのでイラつく辰五郎と、それをなだめる若い衆……この若い衆の客を小バカにしたような態度がなんとも可笑しい。紅梅が来て二人の仲が険悪になってくると、この若い衆はとりなすどころか火に油を注いで喧嘩を煽る。この、辰五郎が怒って見世を飛び出すまでの可笑しさは白酒ならでは。冒頭、杢兵衛の部屋でのドンチャン騒ぎにイライラして聞こえよがしに「うるせぇな!」とアピールする辰五郎が他の客から「テメェがうるせぇ!!」と一喝されるのも最高だ。向かいの見世に飛び込んで新たに辰五郎が馴染みになる花魁の名は志ん生の「若柳」ではなく、白酒は「青柳」で演じている。その後、吉原が火事になって駆けつけた辰五郎がお歯黒ドブに落ちた紅梅と出会う……と、普通ならここからが「ドラマ」になるところだが、言葉遊びでスパッとオチにする落語ならではの無責任さ、淡泊さが素敵な噺だ。

仲入り後は再び白酒が登場して『権助魚』。白酒の演じる田舎者は実に楽しい。冒頭、ヤキモチ焼きのおかみさんが自分に惚れたと思い込んだ権助が「どうしてもって言うなら一度くらい願いを叶えてやる」という台詞は「白酒の権助」だからこそ可笑しさが何倍にもなっている。正味10分でトントンと演じてワッと笑わせ、サッと降りた。白酒の『権助魚』は普段あまり観ることがない気がするが、入れごとをせず「落語の上手さ」だけで爆笑させる白酒の底力を目の当たりにした一席だ。

仲入り後は再び白酒が登場して『権助魚』。白酒の演じる田舎者は実に楽しい。冒頭、ヤキモチ焼きのおかみさんが自分に惚れたと思い込んだ権助が「どうしてもって言うなら一度くらい願いを叶えてやる」という台詞は「白酒の権助」だからこそ可笑しさが何倍にもなっている。正味10分でトントンと演じてワッと笑わせ、サッと降りた。白酒の『権助魚』は普段あまり観ることがない気がするが、入れごとをせず「落語の上手さ」だけで爆笑させる白酒の底力を目の当たりにした一席だ。

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