2月23日(木)、「J亭落語会 桃月庵白酒独演会」。 演目は以下のとおり。
桃月庵はまぐり『牛ほめ』
桃月庵白酒『親子酒』
桃月庵白酒『千早ふる』
~仲入り~
春風亭一蔵『鷺とり』
桃月庵白酒『辰巳の辻占』
白酒の一席目『親子酒』、禁酒しているはずの父親が女房に懇願して酒を飲ませてもらうくだりの「甘えっぷり」が白酒らしくて楽しい。「あと一杯だけ! 愛してるよ!」「ホントですか?」「うん、ホントにあと一杯」「そっちじゃなくて」には爆笑した。そのうち飲み続けていくと酔っ払って何を言ってるのかまったくわからなくなるという、その徹底した泥酔っぷりが実に可笑しく、帰宅した息子のだらしない酔いっぷりがまた輪を掛けて可笑しい。いやもうとにかくハジケまくった『親子酒』だった。
二席目は『千早ふる』。八五郎が「千早ふる 神代もきかず 竜田川 からくれないに 水くぐるとは」と全部言ったのを聞いてから「私は『ちは』だけ聞いて全部わかったが、あえて言わなかった」と言い張る知ったかぶりのご隠居、歌のわけを訊かれて「薔薇という漢字の画数を数えてて忙しい」と言い逃れようとすると「13と13で26ですよ」と即答されて仕方なくデタラメ解釈を披露し始める。竜田川は本名を木村という相撲取り。一勝もできずに廃業し、荒れに荒れて引きこもりになり、ずっとHuluでテレビばかり観ていたが、千原兄弟のライヴを観て一念発起、ちゃんこ屋「竜田川」を始めた。最初はまるで流行らなかったものの、ゆるキャラ「たつたくん」がバカ当たり、これが同業者の怒りを買って、ぬいぐるみが紅ショウガで汚されるという悪質なイタズラに遭う。「バチが当たった」と客が離れていき、竜田川は神頼みの毎日。だがグーグル検索して「水を掛ければ紅ショウガの汚れは落ちる」と判明…これが歌のわけ。(笑) 千原フールー、「神よ」も効かず竜田川、キャラ紅(くれない)に水ググる…本人も言ってるけど、ほとんど新作落語の域。(笑) ちなみに一之輔の『千早ふる』でも「ググる」が出てくるが、これはまったくの偶然。「とは」はフォーエバー(永遠)! いい意味で最高にバカバカしくてくだらなくて素敵な白酒ならではの傑作だ。
権太楼ばりのパワフルな芸風で『鷺とり』を披露した一蔵、最後は鷺とりの男が浅草から牛久に飛ばされて沼に落ちたのを救われて相撲取りになったという稀勢の里由来の一席…とサゲた。この強引さが一蔵らしくていい。(笑)
白酒のトリネタは最近よく演っている『辰巳の辻占』。惚れた女に金を貢いでいる源ちゃんに、叔父さんが「オマエは騙されている。一緒に死んでくれと言って、その女の了見を試してみろ」と忠告するという噺で、白酒はこれを実に楽しく聞かせてくれる。何か話そうとするとつい笑ってしまう源ちゃん、図々しいおたまという女、どちらのキャラも白酒ならではの突き抜けた可笑しさが表現されていて、実にいい。拍子抜けしてしまうようなサゲも、白酒が演ると「落語らしい」となる。『辰巳の辻占』でこんなに笑わせるのは白酒だけ。お見事!