【二つ目グルメ】「なんだかなぁ~な晩御飯」 昔昔亭昇

小学生にとって楽しみなイベントといえば夏休み! 終盤になると、宿題に追われて最終日になんとか終わらせるという、そんな記憶が強くこびりついています。

月に1度のこちらのコラムも毎回直前になって夜中にカフェインでドーピングしながらなんとか書き終えるという、20年前から何も変わらないなぁーなんて思う今日この頃でございますが、小学生にとって楽しみなイベントはもう一つありますね! それは宅配ピザが食卓に並ぶとき! 「今日はピザを頼むわよー」なんて言われた日には、狂喜乱舞しながら、冷蔵庫に貼られたメニュー表を持ってきて本気で頭を悩ませました!

今では宅配代行サービスが普及しましたが、便利な半面いろんなトラブルも付きものなようです。本日はそんなお話。

先日、18時ごろに帰宅しました。日中、熱された部屋の嫌な暑さと絶妙な疲労感。冷房の設定温度を23度に変えることすら気怠い夕暮れ時でございます。

「なにもしたくない…」

なんかスイッチが切れちゃった感覚と言いますか。そんな中、ふと頭に浮かんだ言葉が「なにもしたくない……。でも……グラタン食べたい」

無性にグラタンが食べたくなるときってありませんか? ありますよね?? ありますよねぇ!!! そうなんです! グラタンが食べたくなっちゃんたんです。

私はグラタンが作れない男ではありません。その日、冷蔵庫にある材料を使えば、それなりにおいしいグラタンを作る自信があります。

ただ!!

なにもしたくないんです。なにもしたくないと魂が叫んでるんです。

そこで!

便利で楽しい、宅配代行サービスの出番でございます!

数年前より急に広まった宅配代行サービス!自身では配達を行っていないお店から料理を受け取って、自宅まで運んでくれるサービスですね。今まで宅配といえばピザやおすしが主流でしたが、今では本格インドカレーのお店からコンビニのジュースまで、お願いすればなんでも届けてくれます。

僕が注文したのは近くのファミレスのエビグラタン。近くにあるなら行けばいいという意見は受け付けません! 繰り返しますが、なにもしたくないんです!

スマホアプリから注文と決済を終わらせ、料理の到着は約35分後と表示されました。

「ちょうどいい。実にちょうどいい」

今から「35分後」といえば、お風呂に入って化粧水を丁寧に塗って、美容液でお肌をプルプルにして、ニベアを塗り終わり、発泡酒の缶が気持ちいい音を立てるころじゃないか!

実にちょうどいい!!

入浴が終わり、上機嫌で発泡酒を飲んでおりましたが、40分が過ぎても、50分が過ぎても家のチャイムは鳴りませんでした。

配達員さん、何かあったのかなぁ、大丈夫かなぁなんて思っていた55分を過ぎたころ、チャイムが鳴りました! 無事届いてよかった!

挨拶と感謝をのべ、料理が入ったビニールを受け取り、早速食べようとパッケージを開封しました。

「うん? あれ? あれれ? あー、配達員さんきっと間違えて届けちゃってるなー」

僕が注文したのはエビグラタンでしたが、届いたのは

・ハンバーグが入った容器と、グリーンピースが大量に入った容器(追加トッピングかな?)、ラップに包まれた生卵(or温泉卵)が2つとチーズがありました。

思えば、ビニールを受け取ったときから違和感はありました。

プラスチック容器が2つだったのです。一つはナフキンやフォークが入っているのかなぁなんて思っておりましたが、間違って届いていたのですね。

さて、この場合どこに連絡をするのが正しいのでしょうか。

通常の出前ですと、料理を作った「お店」とそれを運んだ「配達員さん」は同じ組織に属しますが、今回の場合、料理を作った「お店」と、それを運んだ「配達員さん」は同じ組織ではありません。

「お店」もしくは「配達員さん」のどちらが間違ったにせよ、エビグラタンを注文した僕の所にハンバーグとグリーンピースサラダが届いているということは、ハンバーグとグリーンピースサラダを注文した人の所にエビグラタンが届いているということです。

空腹もありますし正直もうグラタンではなくハンバーグでもいいのですが、もしこれを食べてしまうと配達員さんが怒られてしまうのではないか-。とはいえ封を開けてしまった料理を違う人の所へ持っていくのはいかがなものか(特にこのご時世)。

…と、いろいろと思考を巡らせながらとりあえずはスマホアプリから「配達員さん」の方に連絡をしてみることにしました。

僕が伝えたいのは

「エビグラタンより高価なものが届いているので、不足分お支払いしますよ」というのが半分。「もうおなかへったんで、ハンバーグ食べちゃいますね」が半分です。

スマホアプリ内に担当してくれた「配達員さん」に電話がつながるボタンがありましたので押してしましたがつながりません。

「お腹減ってるのになんだよー」なんて思いましたが、考えてみると1番かわいそうなのはハンバーグを注文したのに、エビグラタンだけが届いた人です。

ただ、もし今すぐ食べるという訳じゃないのなら、後々それが発覚したときすごく面倒なことになるのではないかと思いました。ですからどこかにこれは報告しないといけないと思い、今度は料理を作った「お店」に電話をしました。

こっちは通常のお店の電話番号ですからすぐにつながりました。

店「お電話ありがとうございます。〇〇でございます。」

昇「すみません。先ほど宅配代行サービスでエビグラタンを注文した者ですが、届いたのがバンバーグとグリーンピースでして。ハンバーグを注文した人の所にグラタンが行ってるのではないかと思って電話したんですけど」

店「そうですか。では届いた内容を詳しく教えてください」

昇「ハンバーグが入っている容器と、グリーンピースが入っている容器と」

店「グリーンピース? あぁ青豆ですね。青豆サラダですかね」

昇「(うん?なんでわざわざ言い直す?)はい。後、ラップに包まれた卵と」

店「はい。そちらは当店の工夫でございまして、ラップで包むことによって割れづらくしているんです」

昇「(うん。知らないよ)後、チーズ? ですかね? チーズがラップに包まれたやつです」

店「そうでしたか。今確認したところ料理自体は問題なくお店から運ばれたようでございまして、配達員さんが間違ったのではないかと思います。当店としましてはどうにも対応できない所でして」

昇「あ、そうですか。これ別に僕は良いんですけどエビグラタンが届いた方がもしまだ気づいてなかったらちょっとかわいそうだなぁと思いまして。これ開けちゃいましたし、僕食べちゃいますね。別で精算が必要ということになったらまた連絡ください」

店「かしこまりました。配達員さんにこちらからも連絡してみます」

…という流れで、少しだけイライラしながら電話が終わりました。

とはいえ、もしまだ配達員さんが間違いに気づいていないようならいけないと思いましてメッセージだけでも入れておこうと思い、スマホアプリを開きました。それと同時にそのアプリから「ピコン」と通知が来ました。

「お会計の内、450円を返金いたしました。ご利用ありがとうございました」

いやいやいやいやいやいや!!!!!!!

え? どうゆこと?? なに? 俺が返金欲しさにクレームを言いたくてずっと連絡してると思ってた?? おかしいでしょ!!

今このタイミングで返金が来たってことはさっきの「配達員さん」は少し前から間違いに気づいていたってことだよね!! なにこれ?? なにこの対応!! おかしいよ!! これはおかしいよ!! 大ごとにならないように言っただけじゃん!!

空腹のイライラもあったのでしょう。さっきの「お店」の店員さんの「ラップで包むことによって割れづらくしてるんです」という発言も異様に腹が立ってきます。

今言う必要あったか?? もう1回言うわ! 今言う必要あったか??

それに青豆って!! グリーンピースでいいだろうが!! なんでわざわざ言い直した!

そもそも「青豆のサラダ」って、なぁんだそれ!! 聞いたことねぇわ! さも常識のように言うなよ!! 商品名をさも常識のように言いやがって!!

なんてすっかり憤慨でございます!!

宅配代行サービスのスマホアプリをみると、すでに取引が終了しているということで、さっきの「配達員さん」に連絡をとる手段がない! それに宅配代行サービス会社の電話番号も見つからない!

だったら「お店」に電話だ!! しかし!!! これで怒りをあらわにするのは大人としては良くない!冷静に電話をしよう!

そんなことを思いながら「お店」と電話がつながりました。

店「お電話ありがとうございます!! 〇〇でございます!!」

さっきとは違う明るい声の店員さんが対応してくれました。僕は必死にイライラを抑えながら話しました。

昇「すみません。先ほど宅配代行サービスでエビグラタンを注文して、ハンバーグが届いた者なんですけど」

店「あー! はいはい! どーされました??」

声の明るさにイライラ度が増します。ぐっとこらえて。

昇「先ほど、電話切った後に、もし配達員さんがまだ気づいてないならまずいと思いまして」

店「うん! うん!」

昇「一応メッセージだけでも送ろうと思ってアプリ開いたんですよ」

店「うん! うん!」

昇「そしたら急に返金されましたって通知が来まして」

店「うん! うん!」

昇「この対応はちょっと腹が立ったものでそちらのお店の方から…」

店「うん! うん!」

って、てめぇー! 「うん」じゃなくて「はい」だろーがー!!!

なんで急にタメ口?? なんでタメ口???

確かに声質的にはそちらの方が年上っぽいけど!!

っていうか思い返せばお宅の店から1度も謝罪の言葉がありませんけどぉ!! 別に謝ってほしい訳じゃないんですよ!

「お客さまお手数をおかけしまして大変申し訳ございません」って言われたらこっちだって、「いえいえ。なんか面倒かけてすみません」ってなるところじゃーん! なにこれ、なんなの今日ー。

これ以上通話をすると、本当に怒っちゃいそうだったので早々に電話を切りまして、もーなんなんだよー!

せっかく気分よくご飯食べられると思ったのにさー!! おなか減ったなー。

目の前には、グリーンピースが大量に入ったプラスチック容器。青豆と言い直された記憶がよみがえり、また腹が立ってきます!

「なんだよ青豆サラダって! 聞いたことねぇよ! 言い直してんじゃねーよ! 青豆のサラダなんて質素なやつ、誰が頼むんだ、こんなの!」なんて思いながらグリーンピースにチーズと温泉卵ご乗せて口運びます。

………。

いや、うまいんかい!! めちゃくちゃうまいんかい!!

チーズの芳醇(ほうじゅん)な香りと絶妙な塩加減に温泉卵の黄身が絡まってグリーンピース、いや、青豆の甘みを最大限に引き出しとるんかい!! このタイミングで食べてもおいしいって、この青豆のサラダ、すごいおいしいじゃねーか!

翌日、冷凍のグリーンピースを買いに行ったことは言うまでもありません。経緯はどうであれ、青豆サラダおすすめです(笑)

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