あけましておめでとうございます。皆さまはどのようなお正月を過ごされましたか?
家族とゆったり。好きな音楽とともに。お仕事で関係ない…など、さまざまなお正月があると思いますが、落語家のお正月はやっぱり初席です。
寄席の正月興行は元日より20日まで行われており、すごく慌ただしい日が続きます。それはもうお祭り騒ぎです。
普段の倍近い演者が続々と出てきて、下らないことを言ってはすぐに引っ込んでしまいます。芸人は各寄席の出番を掛け持ちしており、この期間は大忙しです。楽屋はごった返しますが、それでも師匠方はとてもご機嫌です。普段の寄席で同期格の芸人が集まることはめったにありません。
前座時代や数年前の忘年会のことなど、わずかな時間でも思い出話に花を咲かせます。後輩としては見ていてとても幸せな気持ちになるものです。本日はそんな幸せを届けてくれる最強の料理のお話-。
新宿にある「博多もつ鍋 おおやま」さんにお邪魔しました。
福岡県出身の私ですが、博多という文字が付いているということで期待値がグングン上昇していきます。店内がとても綺麗で驚きましたが、何より扉を開けた瞬間の濃い匂いに絶句!
メニュー表を開くと、「もつ鍋屋さんあるある」にぶち当たりました。
味付けは醤油(しょうゆ)か味噌(みそ)か。
これは福岡県民でも意見が分かれるところではありますが、私は父親の影響か断然醤油派です!
しかし、「おおやま」さんのオススメは味噌味とのこと。どうする! どうする俺! いつもなら迷うことなく醤油味です。
しかし、このお店では数種類の味噌をブレンドした特製味噌を使っているとのこと! 醤油の味付けもかなりこだわっていると書いてある! どうする。
もう一度メニュー表を見てみよう。
味噌味、醤油味、水炊き風。ミズタキフ? なんだそれは!
「モツをポン酢で食べる」との表記。気になる…。
いや、落ち着け俺。いつでも来られるような値段ではない。よし、醤油味にしよう! いや味噌も捨てがたい!
「うぅーん、味噌で!!」あまりの大声に店内が一瞬静まり返りました。
「すみません」と小声で言った後、鍋が届くまで静かにしておりましたが、さぁ、鍋の到着だ。出来上がった状態で持ってきてくれたので、すぐに食べられる。
中央には鍋を横断するニラの橋がかかっており、左側ではプルップルのモツがワルツを踊っているよう。反対側では豆腐もどこかご機嫌そうに体を揺らしている。まるで河川敷で行われているダンスパーティーを見ているようだ! 無情にも、それを怪獣ノボルドンが襲うのです。
冗談はこれくらいにしまして。
いやぁ本当においしかった。ポン酢で食べてもその良さが消えないであろうモツの脂身は口の中でトロッと溶けて、残ったコリコリの部分もとても歯触りがいい。
スープが染み込んだニラ、キャベツ、豆腐も脇役とは思えないほどの働きをしている。もつ鍋のシメは絶対にちゃんぽん麺です。大事なことなのでもう1度言います。もつ鍋のシメは絶対にちゃんぽん麺です!!
少し煮たって濃くなったスープに太めの麺が絡む。ちょっとだけ残しておいたモツが今度は脇役にまわる。取り皿に残ったスープを飲み干す!
「あぁ…」
天井を仰ぐ至極の時間。幸せだ…。
冷えていた身体もぽかぽか!
「ごちそうさまでした!!」
ぜひまたお邪魔したいお店でした。
個人的な意見ですが、鍋というのは幸せの象徴だと思うのです。良い食材や、雰囲気の良い場所に越したことはありませんが、実は仲間が集まればペラペラのモツでもおいしく食べられる。それが鍋の醍醐味(だいごみ)ではないかと思います。
早くコロナが収まって仲間たちと気軽にコタツを囲みたいものです。それこそ初席の師匠方のように-。